[Interview] HOLY FUCK ~大事なことは流行に流されずに作品を作り続けること

エレクトロ全盛期の2007年にNMEのグラストンベリー・ベストアクト3位に選ばれるなどして注目を集めたカナダはトロント出身のHoly Fuck(ホーリー・ファック)。今回、約6年ぶりとなるアルバム『Congrats』をリリースする。コアなファンに愛され続ける同バンドのキーボード担当グラハム・ウォルシュにSkypeを通じて話しを聞いた。

Holy Fuck

-5年以上ぶりの新作ですが、かなり期間が空きましたね。その理由は? 

まず、前作の『ラテン』のあと一年半ツアーをやって、ツアーが長く続いたからちょっと休みをとることにした。子どもが生まれたメンバーもいたし、そこで少し休みはしたんだ。でも実は、2013年の終わりまでにはレコードの半分は完成していた。そこから完成させるまでに時間がかかって今になったんだ。今までの作品とは違うサウンドが作りたかったんだけど、それを実現させるのは容易ではなかった。でも、2014年はその仕上げの作業にもう取り掛かっていたから、自分たちにとっては時間がかかったという感覚はあまりないんだよ。休みをとったのと、自分たちのスタジオを作ったというのでアルバムを作り始めるまでに時間がかかったのはあるけどね。あと、ブッキングエージェントやマネージャーが変わったり、レーベルを探さないといけなかったというのも理由の一つ。バンド活動から距離を置いていたわけではないんだよ。

-レコード制作の他に、それぞれのメンバーはこの期間どういった活動をしてきたのでしょうか。

それぞれ他のプロジェクトをやっていたんだ。ブライアンはソロ・レコードにフォーカスを置いていたし、僕は他のバンドをプロデュースしていた。ドラマーもいくつか他のバンドのためにプレイしていたし、そうやって皆が自分の可能性をバンドの外で広げられたのは良かったと思うね。

-それらの活動は、作品に反映されていると思いますか?

だと思うよ。それに、そういう活動を挟んでいたから、ゆっくりと時間をかけてレコードを作ることが出来た。前はかなり早いスピードで作ってしまったけど、今回は時間をかけて慎重に作れて良かったと思っているんだ。

-アルバムタイトルが面白いと思いましたが、何に向けてのお祝いなのですか?

僕たちって、あまりタイトルは真剣に考えないんだよな。最初のアルバムのタイトルなんて『LP』だし、次も『ラテン』だし(笑)あえて言うとすればレコードが出来上がったことを祝っていると言えるけど、それだけではなく、ニュートラルな言葉で緊張感がないというところも良いと思ったんだ。バンド名が結構キツいから、それを和らげる効果もあるんじゃないかな(笑)。

-アイディアはどこから来たんですか?

多分、ブライアンが言い出したんだと思う。他にも候補はあったんだけど、“Congrats”って言葉が一番ピッタリだったからそれを選んだんだ。“Congratulations”とはまた違う。“Congrats”っていうカジュアルさがよかったんだよね(笑)。

-そっちのほうが短いし、発音もしやすいし、英語圏外の人も覚え易そうですよね(笑)。

だろ? 完璧!

-#4はおどろおどろしい感じでMVも”Creepy”という表現がぴったりな感じですね。この曲が作られた経緯とMVについても教えてください。

友達のChad VanGaalenが作ったビデオで、彼は本当に才能あるシンガーソングライターなんだけど、アニメーションやビデオも沢山作っているんだ。僕たちの親友で、僕の中では、知り合いの中で一番才能があると言ってもいいかもしれない。彼が手掛ける全ての作品が素晴らしくて、彼の音楽も本当にかっこいいんだよ。ビデオも最高で、僕たちの「Milkshake」っていう曲のビデオも彼が手掛けているんだけど、今回も彼に頼む事にしたんだ。彼はアニメーションが多いんだけど、今回はもっとライブ・モーションが多く取り入れられていて、僕たちもそれがすごく気に入った。彼の違う面が見れて面白いと思うよ。アイディアは、全て彼に任せたんだ。頼れる存在であることはわかっていたからね。

-曲が作られた経緯に関しても教えて下さい。

僕が作ったいくつかのループのアイディアから始まって、そこから僕とブライアンでいくつもデモを作った。そのアイディアをバンドに持っていって、皆でまとめていったんだ。それからレコーディングする前にあらかじめ何度もリハーサルをして、バシっとレコーディングしたんだよ。

-#9はイントロの民族調な感じや、中盤の4つ打ちっぽいテンポなど、これまでにない音作りを展開している、という印象を受けました。この曲の作られた経緯は? これまでにない音作りをやってみようといったチャレンジングな曲だったのでしょうか。

個人的にはチャレンジングだったね。それは、久しぶりにこういった感じの曲を作ったから。これまでにない音作りというよりは、初期のホーリーファックのサウンドに近いのがこの曲だと思うんだ。だから、新作の中でこの曲は他と少し違って聴こえると思う。他の曲が前にグングン進むような感じでこれまでとは違う方向に向かっているのに対して、この曲はHoly Fuckの元々のアイディアに戻っているんだよ。ちなみに、イントロはギリギリでレコードに加えることにしたんだ。それもバタバタだったし、他が新しい方向に進んでいる曲だから、そこにフィットさせるのも容易ではなかったし、そういう意味ではチャレンジングだったと言えると思う。

-その新しい方向性とはどういったサウンドなのでしょう?

例えば「Neon Dad」。普通よりもポップ感が強くて、それは僕たちにとって新しい挑戦だったんだ。このレコードではヴォーカルでも色々試してみてるんだけど、この曲はその中でもすごくポップでそれが強い。だから、そういう意味で結構苦戦したんだよ。レコードにフィットするかも確信できなかったしね。でも、友人達が気に入ってくれて、収録した方が良いっていうから入れることにしたんだ。結構ジャムをしたのは覚えてる。そうやって出来た音にブライアンがヴォーカルラインを乗せて出来たのがこの曲なんだ。

-レコーディングの中で一番苦労した曲や思い入れのある曲とそのレコーディングエピソードなどを教えてください。

ははは(笑)覚えてないな。アルバムを作っていたのは、もう随分前の話しだから(笑)。「Caught Up」は作るのに苦労したと思う。この曲は、レコーディングの前に何度もライブでプレイしたんだ。まとめるのが大変でなかなか仕上がらなかったんだけど、ライブで演奏すると、観客からの反応が良いのはこの曲だった。良いというか、かなり良い反応だったね。それをレコーディングで捉えるのはかなり難しかった。変わったサウンドだし、アグレッシヴだし、大変だったよ。でも、ミックスでより良い仕上がりになったんだ。

-思い入れのある曲に関してはいかがでしょう?

自分が好きな子どもは誰?って親に聞いてるみたいな質問だから、答えられない(笑)。今の時点で自分が好きだなと思うのは、「Caught Up」。誇りに思うのは「Xed Eyes」と「Chimes Broken」かな。これらの曲は、自分たちがグンと前に進んだと思う曲だね。自分たちが進みたいと思う方向に行けた曲。

-アルバムのレコーディング自体の何か面白いエピソードなどはありますか?

2014年の春だったんだけど、トロントに有名な楓の木があって、すごく大きな木で、それについての歌もあるくらい古くて、歴史のある木なんだ。その木がスタジオのすぐ外にあったんだけど、ある夜雷が木に落ちて、木が裂けたんだよ(笑)。ニュースにもなったし、道が閉鎖されたりもしてさ(笑)。もっとあるかもだけど、今思い出せるのはそれだけ(笑)。

Holy Fuck

-プロデュースなど、この充電期間にされていたことと思いますが、プロデュース活動とバンド活動の違い、バンドならではのケミストリーについて教えてください。

プロデュースは、やっぱり相手が自分に何を求めてくるかで役割が変わってくる。サウンドの面だけで関わることもあれば、ソングライティングっぽいことをする時もあるしね。プロデューサー、エンジニアとしての経験は、今回のレコードでも活かされているんだ。レコーディングでもスタジオの仕組みが前よりもわかっていたし、すごくやりやすかったね。

-グラハムさんはソロ活動はしてないですよね?

プロデュース活動だけ。でも、実は妻と一緒にプロジェクトをやってるんだ。

-そうなんですね。ユニット名は?

Etiquette(エチケット)。もっとミニマルで、シンセ、ドラム、ギターが使われた音楽なんだけど、妻と一緒に曲を書いてるんだ。カナダでだけだけど、CDも出てるよ。

-全体を聞いて、これまでのバンドの根幹となる音は変わらず、よりサイケデリック具合が気持ち良くグレードアップして、ファンの期待を裏切らない作品だと感じました。しかし、インディ・ロック・シーンにおけるエレクトロ・トレンドは、現在、最盛期の2008年を境に元気がなくなってきた印象がありますが、この5年以上の間に、インディ・ロック・シーンをどのように見ていましたか?

すごく変わったと思う。プロデュースしながら様々なバンドを見て来たけど、どんなバンドが受け入れられるかがわからなくなってきたと思うんだ。何が上手くいって、何が上手く行かないかが、出してみるまでわからなくなっていると思うね。だからHoly Fuckでは、あまり期待や流行を気にせずに、やりたいことをやるようにしている。そうやって出来た作品に皆が興味をもってくれて嬉しいよ。夏にライブで演奏するのが待ちきれないんだ。ライブだと、よりダイレクトに皆に音楽を届けることが出来るからね。今の時代、本当に沢山のものが出て来すぎているから、人々が作品に注目する時間というのがすごく短くなっていると思う。ビデオも曲も、出したと思ったらすぐに次のあたらしいミュージシャンが更に新しいものをアップするだろ? そんな時代だから、アーティストが出来ることというのは、とにかく何かを作り続けることなんじゃないかな。色々考えたりせずに、作ることを止めない、そしてリリースし続けることだと思うね。

-最近のお気に入りのカナディアン・アクトはいますか? そのほか、カナディアンでなくても、インディでもポップ・ミュージックの中でもお気に入りがあれば。

沢山いるよ。特にトロントには才能あるアーティストが沢山いるんだ。最近、New Fries(ニュー・フライズ)っていうバンドのプロデュースをしたんだけど、彼らは本当に最高。ノー・ウェイヴ・パンク・バンドって感じかな。あと、Fake Palmsもいい。最近のものでも色々あるんだろうけど、今は思いつかないな。今日車でSpotifyのニュー・リリースっていうセレクションを初めて聴いてみたんだけど、リアーナとかさ(笑)。最近の音楽もなかなか良いなと思った。聴いてみるもんだね(笑)。

-質問しづらいことを質問させてください。バンド名について後悔したことってありますか?(知名度が出てくるにあたって、親の反応や、また口ぐせに”Holy fuck”と使いづらくなったとか)

「ないよ(笑)。名前のせいで、ライブ出来なかったってことも何度かありはしたけど。あまりバンド名の意味を考える人もいないし、ただのサウンドとして浸透していると思う。僕たちの親は、最初はちょっと心配していたけどね。でもそんな中、一番このバンド名を気に入ってくれたのは、僕のおばあちゃんだった。彼女は笑いに笑っていたよ(笑)。本当に愛らしい祖母なんだけど、すごく面白いと思ったらしいんだ(笑)。それを見て、親父はちょっと気分がマシになったらしい(笑)。

-娘さんに「パパのバンド名は?」と聞かれたことはないですか?

それはまだないんだ。いつか聞かれるだろうな。どうしよう(笑)。

-日本のファンへ一言お願いします。

皆が恋しいよ。日本もファンは、いつも僕たちを温かく迎えてくれる。皆からもらったプレゼントを未だにテーブルに置いているんだけど、それを見て、いつも日本のことを思い出してるんだ。こうやって日本からのインタビューを受けているのも本当に嬉しいし、戻りたくてたまらない。また近いうちに来日出来るといいな。

(Text By: Mami Hayashi)

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