待望の新作と共に初来日! 再燃するグライムの伝道師、Skeptaを見逃すな!

Skepta「Shutdown」
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「トラック・オブ・ザ・イヤー」に選出したガーディアンやNMEを初め、世界規模で2015年を代表するアンセムの一つとなっていたこの「Shutdown」を病み付きになるほど聴いた人は、ここ日本でも少なくないのではないでしょうか。VineからサンプリングしたDrakeの奇妙なジャマイカ訛りの声、グライム版「Seven Nation Army」と言わんばかりの一度聴いたら耳から離れないリフ、フックでの「シャットダウン!」という、わかりやすい決めフレーズ。グライム特有のBPM140と、スキルフルな高速ラップを維持したうえでのこのキャッチ―な一曲は、2015年におけるグライムをこれまでと違う次元へと運んで行った、ここ数年のグライム再燃の動きの決定打ともなっていたのです。本稿ではその「Shutdown」によって一躍時の人ともなったSkeptaが、いかにしていまのグライムを代表するトップランナーになったのか、待望の新作『Konnichiwa』の発表と共に初来日するこのタイミングで改めて振り返ってみましょう。(山本大地)

skepta

たった2曲のアンセムで復活!

Skeptaはわかるけど “グライム”ってそもそも……そんな人も少なくはないはず。ここでその音楽的特徴を簡単にまとめると、ガラージやダンスホールに影響を受けたBPM140前後のトラックに、カリブあるいはアフリカの血を引いたような訛り全開の高速ラップを乗せたもの。それは2000年代前半、「パンク以来のUKが産んだ音楽ジャンル」としてUK・ミュージックをレぺゼンしかけていました。

Wiley 「Wot U Call It」
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しかしその後、アンダーグラウンドの域から脱せず失速し始めると、Hard To Explain読者には一番馴染みある名前かもしれないDizzee Rascalやグライムのゴッドファザーと呼ばれる大御所、WileyらスターMCたちは当時盛り上がり始めたばかりだったEDMと結びつきチャートで華々しい成功を掴むも、一気にそのルーツを失い、ロンドンのストリートをレぺゼンしていたはずの彼らもセレブのような姿に転身してしまっていたのです。そして、「Bad Boy」を聴けば分かる通り、前述の2人に少し遅れてデビューしていたSkeptaも例外ではありませんでした。

Skepta「Bad Boy」
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そんなSkeptaが息を吹き返すきっかけとなったのが、2014年の「That’s Not Me」です。

Skepta「That’s Not Me」
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弟のJMEと共演したこの曲のフックでSkeptaは「かつては俺もグッチを身に付けてたけど、そんなの俺じゃないから全部捨てちまったよ」と前述した数年前の彼を一蹴。更に、グライムといえばそのロウな世界観が特徴ですが、Wileyが開発したグライムの代名詞的ビート、「エスキビート」が鳴り続けるこの曲では、MVまでわざと粗い解像度で撮られそのモットーを貫いています。グライムのルーツに立ち返って “やれることをやる”、それがスケプタをもう一度真の意味でクリエイティブなグライム・アーティストに戻させたのです。

そして、その一年後に発表されるのが本稿の冒頭で登場したあの「Shutdown」。しかしこの曲は実際リリース当時のチャート・アクションこそ最高位39位と派手ではないし、この時点ではSkeptaのスタイル上の復活後のシングルは「Shutdown」の前にリリースされていた「It Ain’t Safe」を含めてもたったの3枚です。しかもこの曲へのリアクションは前述の2曲と比べればずっと地味でした。では、彼はいかにしてたったの2曲のアンセムによって、2015年のUKミュージック・シーンの顔の一人になったのでしょうか。

グライムとUSヒップホップの橋渡し役に

Skeptaの復活と時を同じくして、2013年辺りからイギリスではその盛り上がりが絶頂に達していたベース・ミュージック周辺とも絡みながら、Mumdance、Murloなどここ日本に来日したDJもいるのが示す通り次々と新進グライムDJが割拠するようになります。するとそこに呼応するかのようにNovelistStormzyら若手MCや、Krept & KonanSection BoyzのようにUSヒップホップ・シーンとも共振するアーティストが登場したりと、その周辺のグライムを構成する海賊ラジオ、コメディ・ドラマといったカルチャーを含めその熱はヒートアップしていきました。そして、それを象徴する出来事の一つが昨年2月のブリット・アワードのKanye Westのパフォーマンスです。

Stormzy「Know Me From」
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Kanye West at Brit Award 2015
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カニエの後ろには黒いトラックスーツを纏った人がたくさんいますが、これはその日カニエと一緒にいたシンガー、Theophilus Londonが「カニエからの頼みなんだ」と、SkeptaにロンドンのMCをたくさん呼ぶように依頼をしたことが発端。ここにはSkeptaと同じくクルー「Boy Better Know」に所属するJammerなどベテランから前述の若手MCたちまで多数のSkeptaを慕う人物が集結しています。

Skeptaはその後も「Shutdown」をきっかけに、Drakeがフェスのヘッドライナーとして出演しているステージに2度も登場したり、A$AP・Mobのメンバーと共演したトラックを発表するなど北米のヒップホップ・シーンとの距離を縮めてきました(先月ドレイクがBoy Better Knowのレーベルと契約したという報が出ていたのも記憶に新しい)。「Shutdown」がアメリカのメディアの年間ベスト・トラックのリストにも出てきていたことも考えれば、いまや北米のリスナーにとっては「グライムといえばスケプタ」、それくらいの存在になっていることが予想できるわけです。本国イギリスでの成功とは裏腹にアメリカへの輸出がほとんど出来ていなかったグライムというジャンルがいまになってアメリカへ拡がり、そしてそこでは本国の若手MCからも慕われ、北米ヒップホップ・シーンとも距離を縮めるSkeptaが文字通り橋渡しに役になっているのです。

Wireless Festivalで共演するDrakeとSkepta
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待望のアルバム発表のタイミングで初来日

そんな現在のイギリスのヒップホップとグライムのシーンを背負ったスケプタが遂に来る2016年5月、初来日をするのです。こちらのロンドンでのサプライズ・パフォーマンスの熱気を見てしまえば、もうその興奮は抑えきれずにはいられません。

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そして最後に忘れちゃいけないのが、その来日を控えたタイミングで、昨年の多忙さもあってか一年に渡って延期された待望のアルバム『Konnichiwa』の詳細が遂にアナウンスされました。しかも来日公演の次の日、5月6日のリリース。トラックリストによれば「That’s Not Me」、「Shutdown」の2つのアンセムも収録されるとのことなので心配いりません。アルバムから現時点で公開されているのは他に、「It Ain’t Safe」、「Ladies Hit Squad」、そして先日公開されたばかりの新曲「Man」の3曲。

Skepta ft. D Double E & A$AP Nast 「Ladies Hit Squad」
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Skepta 「Man」
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「It Ain’t Safe」は彼の生まれ故郷ロンドンはトッテンハムのストリートを題材にしたSkeptaらしい一曲なのに対して、「Ladies Hit Suqd」はA$AP・Nastとも共演しており、正直Skeptaっぽさがあまり感じられないくらいに近年の北米ヒップホップ・シーンとの蜜月が反映された一曲。そして新曲「Man」はなんとQueens Of The Stone Ageのデビュー作の冒頭に収録されていた「Regular John」のギター・フレーズをサンプリング。こちらは予想外なアイディアですが、「Shutdown」同様にクセになる一曲。他にもPharrell Williamsをフィーチャーしたトラックもあったりとアルバム全体を聴くまでなかなか見えてこない部分もありますが、この『Konnichiwa』はいま最も待望されている作品の一つといって過言ではないでしょう。

初となる来日公演は、今回が初の開催となるイベント「Public Labo Block Party」で行われ、しかもこのイベントにはUSヒップホップ・シーンの若手最右翼のYGや、カニエ・ウエストのスタジアム・ツアーなど数多くの大舞台も経験している文字通り実力派DJ、A-Trakなども出演します。そんなところも含めて、まさに最高のタイミングでの来日となるグライム再燃の体現者、Skeptaを見逃すわけにはいきません。

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