[Interview] Bloc Party~スピリチュアルな新作『Hymns』が生まれたワケ

当然のことながら人気を保ち続けること、長くバンド活動を続けることにはいつも困難が付き物だ。同じ頃デビューしたカイザー・チーフスやフランツ・フェルディナンドもそうであったように、このブロック・パーティにもこれまでいくつもの困難があった。2013年夏、バンドは前作『Four』に伴うツアーを終えると、2度目の活動休止期間に入った。その間、フロントマンのケリー・オケレケは2枚目のソロ・アルバムに着手。更に、今年に入るとドラムのマットとベースのゴードンがバンドから脱退した。「ああ、これはさすがにブロック・パーティ、キツいのかなあ……」。そんな風に思った人も少なくないのでは? 

しかし、2000年代のポスト・パンク・リヴァイヴァルを代表する一枚、『Silent Alarm』から10年に当たる2015年の夏、そんな嫌な予感も裏切るようにして彼らは新たなラインナップと共にカムバックしたのだ。しかも新作が準備できている。NMEの表紙にも抜擢されたし、年明けにはDrenge、Rat Boy、グライムMC、Bugzy Maloneら若手期待株と共に全英ツアーを周る。そう、本国でも彼らへの熱い視線は決して失われていなかったのだ。

「これまでとは全く異なる作品」―これはバンドの新作について語られるときに常々使われる言い回しであるが、ブロック・パーティの新作『HYMNS』においてそれは決して無駄な言葉選びではない。シングル「The Love Within」で聴くことが出来るクラブ・ミュージック寄りのアプローチなど、新たなメンバーの助けを借りながらこれまでのバンドらしさに磨きをかけながらも、新作を大きく形作るのはケリーが両親の家で見つけた讃美歌集をきっかけにして生まれたという彼らなりのスピリチュアルなサウンドであり、そのグルーヴもこれまでとは一線を画する。

新たなラインナップと共に本当の意味での第二章に突入したブロック・パーティから今回はギタリストのラッセル・リサックにその新作における新たなアプローチ、そしてロック以外にもダンス・ミュージックやブラック・ミュージックなど広いジャンルに興味を示してきたブロック・パーティだからこそ聞いてみたかった、最近のUKの音楽シーンの状況についても少し語ってもらった。
Interview & Text: 山本大地

Bloc Party Russel

-3年ぶりの日本ですがいかかですか?日本についてからは何をしましたか?

昨日着いたところなんだ。昨日はここ(赤坂周辺のホテル)から渋谷まで歩いてきたよ。今日は原宿のキディランドへ行ってプレゼントを買って、それから代々木公園にも行って、あとマネージャーが初めての来日だったから彼にいろいろ東京を見せて周ったよ。

-では、もう彼にも見せて周れるくらい東京は知っているということ?

ああ。そこそこね(笑)。もう日本に来るのは12回目くらいだからね。

-長い活動休止の期間を経てあなたたちがまたシーンに戻ってきて来日を果たしてくれ、とても嬉しく思います。この2、3年の間、ケリーはソロ作を出したりしていましたが、この間あなたはどんな風に過ごしていましたか?

音楽活動はあまりしていなかったね。息子が出来たんだけど、彼がまだ小さいから彼の面倒を見たりしていたね。あとはMewの作品(今年リリースされた『+-』)に参加するためにデンマークに行って一緒にレコーディングしたけど、それくらいかな。ケリーと新作の制作を作り始める前にしていた音楽活動といえば。

-2人メンバーが脱退するという苦難もありましたが、ケリーとはブロック・パーティを結成する以前から音楽活動を共にしていたこともあって、「また彼と作品を作りたい」という思いは強くあったのでしょうか?

2013年の夏に前作(『Four』)のツアーが終わってすぐのときに、ケリーは「まだブロック・パーティで一緒に音楽を作り続けたい」と言ってくれたんだ。だから活動休止の時期はあったけれど、僕らはそのあとすぐに作品作りを続けることに集中し始めたよ。

-新作『HYMNS』からは3曲聴いているのですが、驚く部分がいくつもありました。既にシングル・カットされている「The Love Within」はこれまでのクラブミュージック寄りのアプローチの延長にもあってあなたたちらしくも思えたのですが、それに対して他の「Exes」、「The Good News」の2曲はとても異質な楽曲に思えました。・

うん。新作はこれまでの作品とは全然違うと思うよ。もちろんいままでのアルバムだっていつも前作とは違うものになっていたけど、今回はアルバム全体でかなりヴァラエティに富んでいるし、まさにそんな風(「いままでと違う」)にいえる作品だと思うよ。キミが挙げた2曲は特にこれまでの作品にはなかったようなタイプの柔らかな曲だと思うね。

YouTube Preview Image

-その2曲はどちらもバラードのような曲に仕上がっていますよね。バラードといえばあなたたちにもこれまで「This Modern Love」や「So Here We Are」などの楽曲がありましたが、そうした曲でもギターのフレーズに見せ場があったり、ドラムも手数が多かったりと、サウンドの面では他の曲と大きく変わりはなかったと思います。それに対して、今回の2曲はコードのストローク中心のギターを筆頭にとてもシンプルなもので、その辺りがとても新鮮に聴こえました。この2曲のサウンドはどのようにして生まれましたか?

うん、その通りだと思うよ。今回はサウンドの中により余白(スペース)を作ろうとしたんだ。もちろん悪いことではなかったんだけど、いままでの僕らのサウンドはいつも音が詰まり過ぎていて、とても忙しなかったとも思ったんだ。いつもあらゆるところ(楽器)で何かが起こっていて。だからこそ、僕らにとって違ったことにトライする機会でもあったんだ。初めて音に余白を作るというね。意識的にそういうことをしてみたよ。

-こちらの2曲のBBC 6Musicでのライブを観たのですが、男性4人がバックコーラスをしていて、どこか「ゴスペルっぽいな」なんて思いました。そうした音楽性もあなたたちは今回強く意識したりしていましたか?

YouTube Preview Image

この2曲に関しては特にそうだね。あとアルバムの中ではもう一曲そういう曲があるよ。いろんなスタイルの男性ボーカルを取り込んでみること、それで新しいことを作り出すっていうことはケリーが特に興味を持って追及していたことでもあるんだ。
男性のコーラスを何人もスタジオに招いてっていうこと自体いままでやったことはなかったし、彼らがハーモニーを作り出したり、即興で歌ってみてくれたりするのを聴きながら何かを作り出すてっていうのは、とてもエキサイティングだったよ。

-その辺りはケリー自身のアイディアではあるかもしれませんが、そのようなアプローチは今回のアルバムのタイトル『HYMNS』(讃美歌)や全体のコンセプトともマッチしたものなのですか?

うーん、アルバムの中の他の曲はまた全然違う雰囲気だよ。確かに音楽の持つスピリチュアルな側面というのはケリーがずっと探求し続けてきたものだし、このアルバムのサウンドの持つ一部分ではあるけれども、他にもたくさん発見出来るものがあると思うよ。

-ではアルバム全体はそういった新しい要素と、「The Love Within」のようなこれまでのブロック・パーティらしさとどちらも聴けるということですね。

うん、毎回新しいアプローチをしていくわけだけど、どんな風にしてみたってサウンドを作っているのは僕らだし、何か僕らがやってきたようなこととリンクしたものになるんだよね。

-前作を出してからは3年ほど経過していますが、この間、音楽的に新しく刺激を受けたものはありますか?

よりたくさんエレクトロ・ミュージックを聴くようにしたね。・ギター・プレイヤーとしてギター以外の楽器で作られたサウンドによりインスパイアされて、それを自分のサウンドの中に落とし込むというのがとても面白かったよ。

-ブロック・パーティ周辺も含めて、UKロック・シーンはここ3年ほどで大きく変わってきていると思います。「元気がない」ともよく言われていた時期を経て、ロイヤル・ブラッドやウルフ・アリスなどチャートを賑わすバンドも出てきましたが、そうした周囲のシーンにはどのようなイメージを持っていますか?

うん、そういう状況の移り変わりについてはまさに僕も同じように認識しているよ。例えば、エヴリシング・エヴリシングなんかは凄く面白いと思うし、ラジオからも以前よりギター・ミュージックを聴けるようになったよ。イングランドではその前まではそれがダンス・ミュージックやエレクトロ・ミュージックだったからね。そういう循環のようなことは歴史的には何度も起こってきたことなんだ。
YouTube Preview Image
でも実際、それでもまだギター・ミュージックから多くのインスピレーション源を発見するのはとても難しいとも思っているんだ。新しく出てくるバンドがやっているサウンドっていうのも、誰かが10年前なんかにやっていたことだったりするしね。だから人気は出ていて勢いはあるかもしれないけど、本当に新しくって、彼らオリジナルなことをやっているバンドを見つけるのはレアだね。

-私も新しいことをやって出てきているバンドは少ないという部分には共感していますが、いまUKではその一方でグライムやヒップホップに人気が盛り上がってきていると思います。

うん、そうだよね。

-ブロック・パーティも年明けにはバグジー・マローンというMCとも共にツアー(NME Awards Tour)に周ったりもしますが、そのあたりの新たな動きについてはどのような印象ですか?

うん、グライムは好きだよ。僕はそこまで多くのアーティストを知っていて詳しいというわけではないけどね。間違いなくそこ(グライム)から聴こえてくるものは好きだし、いまのグライム・シーンで起こっていることは僕にとっても新しくて音楽的にもより面白く感じているよ。グライムMCと一緒にツアーを周るなんて初めてのことだから、とても楽しみにしているよね。ディジー・ラスカルのライブを何年か前に見たことがあるけど、とてもエキサイティングだった。彼(バグジー・マローン)を見に来たオーディエンスが僕らのライブにどんなリアクションをするかなんかも興味深いね。

YouTube Preview Image

-そういうグライムやヒップホップの新たな動きを取り入れてみることにも興味はありますか?

うーん、まだわからないね。もちろん新しいことを取り入れたりするのは興味があるし、いまの新しいメンバーでそれが出来るっていうのはとても楽しみでもあるけれど、まだこの新しい(バンドの)ラインナップになったばかりだし、ライブの機会もこれからたくさんあって「バンドのこれからに楽しみ」って感じだから何をするかっていうところまでは決めてないね。

Bloc Party Russel 3

===

取材の次の日にはHostess Club Weekenderで「Banquet」や「Helicopter」などデビュー作からの代表曲から新作からの曲も含めたセットでオーディエンスを湧かせたブロック・パーティ。新たなラインナップで放たれる初めてのアルバム『HYMNS』は2016年最初の注目作だ。

ヒムズ ヒムズ
ブロック・パーティー

ホステス 2016-01-29
売り上げランキング : 97708

Amazonで詳しく見る by AZlink

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です