Foals~氷河期をも生き抜いた怪物バンドのこれまで (2)

いまやUKを代表するロック・バンドになったフォールズ。今回のFeatureでは彼らの歩みを、前回の第一弾でデビュー・アルバム『Antidotes』~セカンド『Total Life Forever』期に焦点を合わせて振り返ってきました。第二弾となる今回はより一段と彼らがUKロック・シーンの中で地位を上げることとなる前作『Holy Fire』から新作『What Went Down』の動きを、前回同様、アルバム・レビューとMVのピックアップで振り返ります。彼らのサウンド、MVに見せるスタンスにどのような変化があったのかチェックしていきましょう。

Text : 山本大地

FOALS

『Holy Fire』 (2013)

~強い野心とエネルギーの籠った重要作~

foals holy fire

このサード・アルバムでフォールズが次に目を付けたのは、端的に述べるなら “ヘヴィで骨のあるロック・サウンド” と “初期とはまた別の、ダンサブルなサウンド” だ。まず、「Inhaler」や「Providence」で聴ける、強くうねりをあげるようなベースラインを中心にした音作りは、初期の細々とした単音中心のギター・リフとは明らかに一線を画す。若者たちの狂騒的パーティから内省とチルを経て、バンドはアリーナ、そしてスタジアムへと向かう大きな野心を手にしたようである。そして「My Number」、「Out Of The Woods」で聴けるBPM130前後のファンキーなサウンドもこれまた新境地。特に前者に至っては歌詞だってポップ、いやシンプルだ。「You don’t have my number, we don’t need each other now / You can’t steal my thunder cos you don’t have my lover’s touch」こうしたわかりやすいフレーズの繰り返しがメインになっており、前作での神話にも影響を受けた科学的、そして内省的なアプローチによってリリックを書いていたとは思えないほど。これらのトラックがあまりに強力であることによって後半に行けばいくほどその存在が霞みかけてしまう曲があるのはもったいなくも思えるが、ポップかつヘヴィなナンバーたちを携えた本作は、バンドの地位をいまに続く位置へと大きく押し上げた重要な一枚であることは明らかだ。バンドにとっての新たなマスターピースでもある「Inhaler」、チャートでも自身最高位となる23位を記録した「My Number」という2曲が先行シングルであったことも功を奏し、本作は前作から大きく順位を上げ、初登場2位を記録。マーキュリー・プライズへのノミネートを含め、英国では本作はこの年を代表するロック・レコードとなった。

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#6 Inhaler

注目ポイント! 3:55~

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音楽に合わせて身体をくねらすダンサー、ガード下にたむろうスケーター、グラフィティ・アーティストに、MTBライダー、タトゥー職人……そう、この曲のテーマは“ストリート”。バンドの演奏とさまざまなストリート・アーティストのパフォーマンスが交互に流れるMVは3:55からが見どころ。マイケル・ジャクソンの「スリラー」みたいな、操られたような群舞の長回しが曲のクライマックスに向かって背筋をざわっとさせる!緊張感のあるビデオクリップ。(Minaë Tani)

#7 My Number

注目ポイント! 0:00~0:28, 4:38~5:17

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ファンキーな楽曲に合わせて踊る若者たち、そしてその裏では、IDを忘れギグ会場に入れず女子たちに馬鹿にされる惨めな少年(エンディングで彼はこの女子たちの踊りにノリノリ!という結末があるが)……。もちろんそのギグで演奏しているのはフォールズだが、彼らはクールに演奏して去っていくだけ。このアルバムからはMVにおけるメンバーの個性は控えめになったし、この曲では彼らはあくまでビデオの引き立て役。それじゃちょっと寂しいじゃないか!(山本大地)

#8 Late Night

注目ポイント! 全編

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はじめにこのビデオ、「刺激が強いのでご注意!」というお断りを。豪勢な館を舞台に、ある部屋では激しいセックスに興じる男女、別の部屋では子を産む女性、そして果てにはベルトを天井に吊るし自殺しようとする男……。ディレクターはこのテの(英語圏では “NSFW=Not Suitable For Work” 「職場見るのには適さない」という意味のスラングが使われる)ビデオがお得意のNABIL(「Bad Habit」や新作の「Give It All」でもディレクターを担当)で、これまたメンバー自身の個性よりディレクターのアート性が際立つ作品に。初期とは別の意味でもインパクトの強さは変わらず!
(山本大地)

『What Went Down』(2015)

~その座を譲らぬ強靭さとアレンジの妙~

foals what went down

前作でサウンドも、人気も、更に地位も大きくスケールアップしたフォールズ。そんな中にあって、まずこの新作のオープニングとなる、「What Went Down」はそうした「バンドのいま」に見合った、フォールズ史上最も骨太かつダイナミックなトラックといえる。叫ぶように声を上げるヤニスのボーカル、とにかく図太いギター・リフとベースラインの応酬。それは中盤の「Snake Oil」でも顕著であり、本作の全体的なイメージを決定づけているように思える。しかし本作は、00年代から英国産のインディ・ロックの様々な名作、そして一番最近では今夏多くのフェスにヘッドライナーとして駆け回ったマムフォード&サンズとフローレンス&ザ・マシーンの最新作に携わったジェームス・フォードによってプロデュースされただけあってか、それだけに留まらない多彩なアプローチも聴きどころだ。アンセミックなシンセ・ポップにさえ聴こえる「Albatross」や「Night Swimmers」、NMEが “フローレンス・スタイル” なんて言葉を使うのも納得の「Give It All」や「London Thunder」の幻想的なアレンジなど。そしてもちろん、フィナーレを飾る「A Knife in The Ocean」ではセカンドで培ったフォールズ節のアートロックも全開。確かに、ロイヤル・ブラッドやブリング・ミー・ホライズンを初めとした若手の活躍で “ラウドなもの” が受け入れらやすくなっている昨今の英国ロック・シーンの土壌においては、単に「よりヘヴィになること」も頭のいい選択であったかもしれない。しかし、本作はそうした前作で得たサウンドの延長にあるものに頼るのではなく、ポップスからエレクトロ、インディまで、現在の音楽シーンを形作る幅広いアイディアに巧みに接近することを通して、まさに “大文字のロック・サウンド” を完成させているといえるだろう。前作で築き上げたバンドの地位はより強固なものとなったはずだ。

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#9 What Went Down

注目ポイント! 4:49~

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晴天の下、光る水面の海をひとり泳いで渡る女の子。そこへ女の子の後ろを追いかける影がふたつ。更に岸辺に立つ険しい表情の男と、口角から泡を飛ばして走る猟犬、。関係性もストーリーも謎につつまれた人物4人の描写が、シリアスでへヴィなサウンドと相まって思わず手に汗握るミステリー仕立てのMV。“岸辺の男”の4:49~の顛末に注目。(Minaë Tani)

#10 Mountain At My Gates

注目ポイント! 全編

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少し前には日本でも巷で話題だった「4K」の映像を導入したのが新作からのこのビデオ。この4Kビデオの何が凄いって、なんとYouTubeのアプリやGoogle Chromeで視聴すると、画面を360度動かしながら楽しむことが可能なんです!とりあえず画面にカーソルを当てて動かしてみよう。そしてシーンによってはなんとヤニスを3人も一つの画面に収めることだって出来るんです!いやあ、最後の最後はヤニスですね。もう一度いいます、「ヤニスが3人!」(山本大地)

Mountains at My Gates capture

もちろんライブが見たい!

フォールズのこれまでを振り返ってきた今回のFeature。マスロックなどにインスパイアされビジュアル的にも個性的だった初期から、UKロック全体に元気がなかった、まさに “氷河期” のような時期を超えシーンの覇者にまで成長した最近まで、その進化は凄まじいほど。こうなってくるとあとはライブを観たいもの。前作のツアーでもフジロックへの出演に加えて、単独公演も果たしているので今回もきっと期待できるはず!?

ということで、最後はライブの終盤の定番トラック、「Two Steps, Twice」のGlastonbury 2013の映像でお別れです!!壮絶かつダイナミックな演奏をご堪能あれ!

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