Foals~氷河期をも生き抜いた怪物バンドのこれまで (1)

「アーティック・モンキーズ以降UKには面白いバンドがいない!」大袈裟ながらそんなことを言う人もいるかもしれない。そりゃあ確かに、中にはロックが始まる以前や、戦前の音楽も引き出しにしているバンドも多々いるし、ここ5年くらいの間刺激的だったのは、どちらかというと北米のインディ・シーン。それにUK国内でもここ数年はベースミュージックの、ヒップホップやR&B、ひいてはメインストリームのシーンをも巻き込んだ動きにロックが負けてしまっていたということも否めない。

しかししかし、現状はそこまでネガティブでもない。いまのUKのロック・シーンをきっちり眺めてみて、「ロイヤル・ブラッド、ウルフ・アリス、キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン、サーカ・ウェーブスなどちゃんとチャートを盛り上げてくれるバンドも登場してきているし、巷で言われていた『冬の時代』なんていうのはもう終わり!」なんて口にしたくなるのもまた事実でもあるのだ。では、これらのバンドは突然何もないところから現れたかというと、そういうわけではない。時代の流れとして、これらのバンドたちが追う、一歩先にいる先達がいるのだ。そう、00年代終盤から最近までのUKロック・シーンは、本当に “何も” 面白い動きがなかったわけではないということだ。

その約5年やちょっとの間、地道に優れたアルバムをリリースし、ファンベースを広げながら着実にその地位を上げてきたバンドたちがいることを忘れてはならない。昨年はボンベイ・バイシクル・クラブが、そして先月はザ・マッカビーズが、それぞれ4作目にしてキャリア初の全英1位の座を手にした。そして、今回特集する、デビューから約8年が経過したフォールズも同じだ。新作『What Went Down』は前作の2位に続き、初登場3位と安定の人気を誇り、近頃は「来年のフェスティバルのヘッドライナーか?」なんて声も聞かれるようになった。 今回のFeatureではそんなFoalsのこれまでを、各アルバムのレビュー、そしてヤニスを初め強烈な個性を放つバンドのMVと合わせて振り返りながら特集する。あなたはデビュー・アルバムの頃のあのサウンドを覚えているだろうか!?

Text : 山本大地

FOALS

『Antidotes』 (2008)

~マスロック、アフロ、強い個性を手に鮮烈デビュー~

foals antidotes

ヤニス(ギター・ボーカル)、ジャック(ドラム)がもともとはマスロックのバンドを組んでいたことが象徴するように、彼らの、特に初期の影響源は、アーサー・ラッセル、ハーモニア、トーキング・ヘッズなどミニマリズムの手法に乗っ取り、かつエクスペリメンタルなもの。しかし、本作はそうした「マスロック」、「エクスペリメンタル」という言葉の持つ「取っつきづらそう」、「難解そう」などというイメージとは裏腹に、当時盛り上がりを見せていたラプチャーらDFA周辺のディスコパンクの雰囲気もあってかダンサブルであり、メロディも至ってポップである。この記念すべきデビュー作で彼らは、そうした自分たちの影響源をただそのまま昇華するのではなく、もっとより広いリスナーの耳を刺激するようなサウンドに解体し、刷新したのである。振り返ってみればヤニスがそのマスロック・バンドを脱退した理由として「シリアスになり過ぎていた。もっと楽しく音楽をやりたかった。」という旨の発言をしているのにも納得だ。また印象的なホーン・セクションはアフロビート・バンド、アンティバラスのメンバーによるもの。このデビュー作を聴いて、00年代前半からのガレージロック・リバイバルのバンド群とはまた違ったアプローチが鮮烈だったからこそ、同じころ登場したバンドの多くがアルバム一枚でシーンから姿を消してしまうなか生き残り、ここまでビッグになれたのだろうと感心してしまう。当時デビュー前からメディアで大きく取り上げられていたこともあり、本国では初登場3位と商業的にもいきなり成功している。

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#1 Hummer

注目ポイント! 0:55~1:09, 1:22~1:35, 1:48~2:13

 

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まさにディスコ・パンク調な軽快なリズムにシンセの乗ったこの曲は、惜しくもアルバムからは省かれてしまったものの初期の人気曲!と言い出したのはいいものの、この曲、注目すべきはとにかくこのビデオですよ!とにかく、テニス・ユニフォームを纏ったヤニスの「アーイ!カモーン!」に合わせて右手を動かす謎の動きに注目ですよ!初っ端の曲ですが、早くも僕には意味がわかりません…。更にその後、ゴーグルをつけさせられた他のメンバーも巻き添えに!?(山本大地)

え、もしかして、このMVみてるあなた、気づいたら右手をヤニスのように動かしてません…?
ということで、HTEのフリペ時代の過去記事が踊り方おしえちゃいますよ~!!

hummer dance

#2 Cassius

注目ポイント! 0:30~, 1:03~

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初めて観た時には、2カット目に落ちてくる”ブツ”、3度見しました。紐に吊られてプラプラと揺れる、それは生肉。生肉と花と戯れ、巨大な生肉をぢっと見つめるヤニス。微妙に音とずれた口パクの映像のタイミング。シュールすぎて妙な後味が残る怪作。「Hummer」のような痙攣気味のダンスにも注目です。(Minaë Tani)

#3 Olympic Airways

注目ポイント! 1:58~

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「Hummer」や「Cassius」がライブではレア曲になってしまったのと比べると、最近のライブでもしっかりセットリストに組み込まれることが多いこの曲。こちらのMVでは「野生のヤニスと仲間たち!」をじっくり堪能できますよ~!体中泥だらけになり、あらゆるものを燃やし最後は池に飛び込んで…ってキミたちそっちの生まれだったの!?(山本大地)

『Total Life Forever』(2010)

~前作から一転、美しきアートロックを展開~

foals total life forever

デビュー作で大衆についてしまったイメージからいかに脱却するか、それはどんなバンドも一度は悩むこと。フォールズは『Antidotes』のリリースから約1年と数ヶ月が経過すると直ぐにセカンドの制作を始めた。しかし、そのスパンこそ短期間ながら、バンドはリスナーの予想を裏切る方向へ見事にシフトした。何より、デビュー作にあった性急なビートやポストパンクのノリのいい部分は鳴りを潜め、完全にポップと呼べるトラックは「Miami」くらいといっても過言でないくらいである。本作において彼らは、エモーショナルな表現方法を身につけ、壮大さを手にし、大きくサウンドのスケールを広げることに成功している。その象徴とでもいえよう「Spanish Sahara」には、静寂で始まり、クライマックスに向けて大きく高まっていく一つの物語がある。バンドは過去のダンスホールとは全く別の場所へと向かいチルしていき、新たに快適な場所を見つけたようだ。いかにも意味の深そうなタイトル『Total Life Forever』が、未来学者・発明家のレイ・カーツワイルの著書「The Singularity is Near(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)」からヒントを得ているというだけあって、歌われているのは未来への恐怖、不安など、知的でありながらも自身の内面に迫ったもの。そんな内省的ともいえようテーマを、適度なエフェクトを中心に構成された美しいアートロックに乗せて溢れんばかりの熱を込めて表現したヤニスのボーカルの成長も特筆に値する。チャートでヒットするような先行シングルがなかった(アルバム全体で見ても「This Orient」の96位が最高である)こともあり、チャートでは初登場8位と前作と比べれば少し出遅れてしまったものの、結果的にはバンドこの新たな方向性はファンからも、批評家からも好意を持って受け入れられた。

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#4 Miami

注目ポイント! 0:00~, 3:10~

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Foalsと縁もゆかりもなさそうな太マッチョな人々の筋トレシーン、ドラァグクイーン(?)とのもみ合い、そこへ登場する青い車に乗ったゴツい男が青い粉を吹きかけると、いざこざは止みプッチャハンズアップなパーティが始まる……。冒頭”カセットテープ”でかかっているのが「Olympic Airways」、車の同乗者が2ndアルバムのタイトル付のバットを持っているなど意味深なシーンが散りばめられているのだが、何度見ても画が強烈すぎて謎がちっとも解けないMV。(Minaë Tani)

#5 Spanish Sahara

注目ポイント! 全編

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NMEの2010年年間べスト・トラックにも選ばれたフォールズの中の名曲。「内面にある “恐怖” と “激情” を表現」なんて歌詞に沿っちゃってるし、スコットランドの海岸の冬の景色にも見とれる。うーん、ここは名曲なだけあって、割とマジメなビデオ。突っ込みどこ、あんまないじゃないか!(山本大地)

フォールズのこれまでを振り返る今回のFeature、前編はここまで。ビデオを見て感じた人もいると思うけれど、この2枚のアルバムの時期は、誰よりもヤニスの個性のインパクトが強かった(っていうかマジ強過ぎ!)。特にヴィジュアル面…。最後に、そんな彼にスポットを当てた『Antidotes』発表時のこちらの記事でお別れです!!

yanis

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