[Album Review] Duran Duran – Paper Gods ~自分を見つめることも必要なお年頃

まずはじめに断っておかねばならないが、欧米圏で「デュラン・デュラン」という名前は必ずしも「懐かしのポップスター」ではない。前作『All You Need Is Now』(2011年)の日本盤が結局でなかったからわかりにくいかもしれないが、あのアルバムでデュランは復活を遂げていた。初のインディ落ちでのリリースながらレヴューは好意的なものが相次ぎ、本国イギリスでは初登場で11位、アメリカでもトップ30入り。いや、そうした順位的なことより彼らが好調だったことを裏付けるのはツアーで、このアルバムのプロモーションだけで2年は費やし、長く愛される作品となっていたのだ。

そうなる理由を作ったのはプロデュースに当たっていたマーク・ロンソンの存在だ。デュランはこの当時、マークから「最近のアーティストはあなたたちを真似したような人が多い。何なら本物がもっとちゃんとした手本を示すべきじゃないですか」とのアドバイスをもらい、それが彼らの目を覚ました。今でも「ロックの名盤」としてしばしその名を挙げられる『リオ』を彷彿とさせる作風で、彼らは改めてのリスペクトを得るに至ったのだ。

もっとも、その再評価をちゃんと受けるのには思いの他時間がかかったが、その遠回りな感じがまた彼ららしい。実は彼らが再注目されて然るべき瞬間はさらにその10年近く前に実際に存在したのだから。それは2000年代前半、いかにもデュランな80s初頭風のエレポップ・リバイバルが起き、やれエレクトロクラッシュだ、ザ・キラーズだ、シザー・シスターズだと出て来た頃だ。ここで待望論は実際にあったし、そのタイミングで運良くオリジナル・メンバー再集結での再始動も実現した。なのに外した。その阻害要因となったのは 、彼らをよく知らない人からすれば意外かもしれないが、彼らの音楽に対する行き過ぎたまでの生真面目さゆえだった。もう既にヒットが出なくなって久しかった頃なのに「過去に留まるなんて音楽家として終わってる」と本当に思い込んでいたためで、オリジナル再編でも「焼き直しはしない」という約束さえあったほど。全盛期の彼らのアイドルとしての軽いイメージからすれば意外かもしれないが実は頑固で不器用なのだ。ただ、それがゆえに自分たちが築いて来た、再評価さえされた美点に長いこと気がつき損ねていたことも皮肉ながら事実。その辺は彼らの目から鱗を落としてくれたマーク・ロンソンに感謝だ。

その前作での成功を経て、めでたくメジャーにも復帰。新作にはロンソンに加え、ダフト・パンクとコラボで再注目もされたかつての担当プロデューサー、ナイル・ロジャースも加わった。オイシくないわけがない。「今度こそ、多くの人が注目するタイミングでみんなが納得する再評価を手に出来るはず!」。そんな期待が、実際、ファースト・シングルのジャネール・モネイまでもが参加した「Pressure Off」までは強かった。

だが、残念ながらデュランは積年の癖をまた露呈してしまうこととなってしまった。「僕らの世代で、今の若い世代と対等に音を作ってる人がどれだけいる?」と、サウンドの要でかつてはあの小室哲哉でさえ憧れたニック・ローズは自信ありげに語ったが、その自負が空回ったか、今回のデュランは、下手に「現在進行形」に向きあってしまった。随所に聴かれる「もしかしてEDM?」なアプローチは、本来の「デュランだから聴きたいフレーズ」から彼ら自身を遠ざける結果となってしまった。幸い、再編成後に声を取り戻したサイモン・ル・ボンの声が瑞々しいのと、ジョン・テイラー自慢のスラップ・ベースが久々に力強い跳ねを聴かせてくれているのとでモチベーションが高いイメージは伝わるのだが、その方向性が残念ながら正しくはない。

思えば、デュランがこういう外し方をするのは昔から珍しくない。全盛期の頃も、女の子に空前に人気があったのに、急に男っぽさを打ち出してハードロッキンなファンキーさに走ってみたり、90sのときもアダルト路線で復活したと思いきや、レッド・ツェッペリンやルー・リードをカバーするアルバムを作って「キミらには10年早い」と酷評されてきた。全盛期から見守って来た立場からすれば、「おいおい、またなのかよ」と天を仰ぎたくもなる。

ただ、このもどかしさも含め、それもまたデュランなのかもしれない。たしかに、「『リオ』みたいなの、さっさと作れよ」と思ったこともある。しかし、それをせずベストではなくとも、試行錯誤して数十年やって来たことで彼らなりの音楽の幅や多様性も生まれたし、それが意外なヒットも時折生んで来たことも事実。その前向きな理念が彼らを決して懐メロのバンドにはしなかった。

しかし、僕は改めて彼らに伝えたい。「もう、無理しなくて良いよ」と。彼ら自身が敬愛するデヴィッド・ボウイだって、やれインダストリアル・ロックだ、ドラムン・ベースだ、と流行を自分のサウンドに取り入れることはやめ、過去の自分と向き合ってベストだと思われる表現を見つめだしてから好作品を再び生み出せたではないか、と。張り合うんじゃなくて、自分自身を見つめるだけで、若いアーティストの方が自然と気にしてくれる。それを彼らには忘れてほしくないのだが。(沢田太陽)

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