[Album Review] Beach House – Depression Cherry ~喪失からの原点回帰

およそ3年ぶりとなるビーチ・ハウス(Beach House)の5作目『Depression Cherry』はファースト・アルバム『Beach House』を思い起こさせる。

『Teen Dream』、『Bloom』で躍進的なブレイクを果たし、彼らが今の”00代のドリーム・ポップ”というジャンルを築く前の荒削りな、自分たちのサウンドを模索していた時の雰囲気だ。前作『Bloom』はビルボードで最高位全米7位とセールス面においても成功をおさめ、ワールドワイドなツアーも行った。環境がそんな風に変わったら有名なスタジオで著名なプロデューサーの元、最新鋭の楽器を使ってのレコーディングもやりそうなものだが、彼らが目指したのは初心に帰るかのようなシンプリシティ。アンティーク・オルガンなど素朴な楽器と生のドラム(これまではドラム・マシン)のみで構成されている。鬱蒼としたムードは、バンドが作品紹介のページで、哲学者ショーペンハウアーの「人間は喪失でのみ、ものごとの価値を理解することができる」という言葉を引用しているように、ものごとにおける「喪失」がテーマとなっていることも影響しているのかもしれない。歌詞に細かく目を通してみると、恋愛における喪失を想像してしまう。このアルバムのハイライトとなる『Beyond Love』は思わず個人的体験に重ねてしまう。曲の中でヴィクトリアは愛に敗れ、その先には何があるのか「心から知りたい。息ができないくらいに」と切実に訴えかける。
相手を鳥に例え束縛しないことを歌う「Blue Bird」は音の構成が面白い。不安感を煽るような金属音が全体を流れるなか同じ音階のオルガンとギターのストリングスが段階を経て分かれていく様がとても美しい。
このアルバムには、ジャンルに押し込められるのを良しとせず、マイスペースに自分たちの音を追求する産みの苦しみがつまっている。前2作の一聴したらトリップ出来る多幸感に溢れているわけではないが、その軌跡をたどる価値は絶対にある。

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ディプレッション・チェリー ディプレッション・チェリー
ビーチ・ハウス

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