Tame Impala 〜なるべくしてなった2015年の主役!

「テーム・インパラをサイケ・バンドだと思ったら大間違いだ」。最新作『Currents』を聴き終えて、周りにいる彼らのことを少しでも知っている人に言いたかった言葉はコレだ。これさえ読めば、2015年、地位も実力も新たな域に達したテーム・インパラ、そして中心人物ケヴィン・パーカーのここまでの歩みと、いかにして彼らがサイケの枠を超え、ポップ・アルバムとしての快作を作るに至ったかを知ることが出来るはず!
text:山本大地

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“オーストラリア” から現れた “サイケデリック・ロック” バンド

テーム・インパラはもともと、作曲・レコーディングなどバンド活動のほとんどにおいて中心的役割を担っている男、ケヴィン・パーカーのソロ・プロジェクトとして始まった。何枚かのEPのリリースを経て、2010年、ザ・アヴァランチーズ、ウルフ・マザーそしてカット・コピーなど、オーストラリアのローカル・シーンで現れたバンドを広く世界へ届けてきたモジュラー・レコーディングからデビュー。当初はその出自から、オーストラリアのローカルなシーンと関連付けて考えていた人も少なくないだろう。事実、デビュー・アルバム『Innerspeaker』はチャートでも本国オーストラリアでは4位と華々しい結果を残したものの、イギリスで144位、アメリカではトップ200圏外と、この時点ではまだ世界的なアピールには至っていない。
また、初期のサウンドは、リヴァーヴ、フェイザー、ディレイなどのサウンド・エフェクトを巧みに用いた、クリームや後期のビートルズ、あるいはジミ・ヘンドリックスなど60年代後半から70年代初めごろのサイケ・サウンドからの影響が今以上にストレートに滲み出たものであった。奇妙なリフやリズムの構成などにはオリジナル性があったかもしれないが、やはり「サイケデリック・ロック」という枠に留まっていたというイメージも強かったことだろう。例えばデビューEPからの「Half Glass Full Of Wine」だが、音も展開もクリームの「Sunshine of Your Love」からの影響も感じずにはいられない。

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デビュー・アルバム「Innerspeaker」は、一部インディ・メディアを中心に十分に高評価を獲得していたものの、やはり「60年代後半のサイケ・ロック」という文脈と重ねられて語られることが頻繁であり、一方ではそうした過去の音楽を現代に更新する、いわば “レトロ” バンドと見られていたことも否めない。

決定的評価を手にしたセカンド『Lonerism』

「“オーストラリア” から現れた “サイケデリック・ロックバンド”」 だったテーム・インパラのキャリアの大きなターニング・ポイントは、紛れもなくセカンド・アルバム『Lonerism』だ。彼らへの評価はこの作品で大きく変わることになる。本作において彼らは前作同様サイケデリック・ロックを一つの軸としながらも、前作以上に多様なエフェクト、シンセサイザーなどを使いこなし、大きくサウンドの幅を広げることに成功した。また、欧米を中心に人気のスマートフォン、「ブラックベリー」のTV CMにも使われたシングル「Elephant」は、まさに象の足音のようなキャッチ―なリフとシンプルな構成によって彼らの名を一躍世界に広める役割も果たした。この作品で彼らはポップなメロディを書けることも証明し、ソング・ライティングのセンスも格段上がったのだ。

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『Lonerism』はその年のイヤー・エンド・リスト(いわゆる「年間ベスト」のリスト)で、NMEの1位を初め、英米数多くのメディアでトップ10以内に選出され、フランク・オーシャンの『Channel Orange』、ケンドリック・ラマーの『Good Kid, M.A.A.D. City』と並び2012年を代表する一枚となった。また、グラミー賞でもベスト・オルタナティブ・アルバムにノミネートされ、彼らへの評価は「インディ」や「ロック」という枠を超え始めたのであった。

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『Lonerism』以降のケヴィンの活動と世界が寄せた期待

ここで話をバンドの中心人物、ケヴィン・パーカーに当ててみよう。
バンドは『Lonerism』で世界的な評価を獲得し、ファン・ベースも大きく広げたのだが、彼は決してその実績に満足するような男ではなかった。『Lonerism』以降の彼は、まず、以前からドラムで参加したこともあった同郷のバンド、ポンドや、フランスを拠点に活動するメロディ・ポシェット(一時期ケヴィンと交際していた)のバンド、メロディズ・エコー・チャンバーの作品の制作にも大々的に関わった。
他にも彼のサイド・プロジェクトは挙げればキリがないが、ここで特筆すべきは彼が得意とするサイケデリック・ロックを中心としていたこれらのプロジェクトたちとは異なる、2014年後半以降の活動である。映画『ダイバージェント』のサウンドトラックでは、ケンドリック・ラマーと共演。更に2015年を代表するポップ・アルバムの一つといえようマーク・ロンソンの新作『Uptown Special』にも3曲参加。ヒップホップなどのほか、メインストリームへも積極的に接近するようになっていたのだ。

しかし、こうした活動も彼が以前からアウトキャストの楽曲をカバーするなどメインストリームの音楽への造詣も垣間見せていた彼からすれば、不思議なことではなかったようにも思える。

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気づけば『Lonerism』は時代を代表する重要作の一つとしてより大きな評価を得るようになっていた。そして、ケヴィンの数多くのサイド・プロジェクトや他ジャンルへの接近などによって、「テーム・インパラ」あるいは「ケヴィン・パーカー」は音楽ファンにとって目の離せない存在となっていた。そんな矢先に制作中との噂が出た新作は、「今年最も期待されているリリース」として多くのメディアにピックアップされることとなる。決してこれは大袈裟な表現ではない。
また、今年はその新作のリリースを控え数多くのフェスへの出演を発表していくが、コーチェラでの準ヘッドライナーを初めとして、その多くでスロットを大きく好位置に上昇させた。バンドとしての地位も大きく上がり、来たる新作への期待の大きさは様々なところで現れるようになるのだ。

期待とここ数年の活動が結実した新作『Currents』

大きな期待の元、発表された新作『Currents』は、バンド自身のプレッシャーを全く感じさせないどころか、こちらの期待も決して裏切らない快作である。というのも、まず信頼度の高いケヴィンのソング・ライティング力は、維持されたどころかメロディの幅がより広がり、更なる成長も見せている。そして、サウンドの面では、ここ数年の他ジャンルへの接近を超えた彼だからこそ形にすることの出来た、彼自身のポップ・ミュージック愛を感じさせるものになっている。

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エレクトロニック・ミュージックやダンス・ミュージックの影響の強い先行シングル「Let It Happen」やR&B、ソウルの色もチラつかせる「Cause I’m a Man」といったシングル曲はその象徴であろう。

サイケ・サウンドの匂いはしっかり残しながらも、ポップ、R&B、ダンス、エレクトロなど様々なジャンルを昇華し新たな域に達した新作は、デビュー時の「サイケ」の枠に留まらないどころか、「インディ」や「ロック」といった枠を超え多くのリスナーにアピール出来るようなサウンドを手にしたといえる。『Currents』は本国での初登場1位を初め、全英3位、全米4位と世界中で好セールスの滑り出しを見せている(前作『Lonerism』は英・米それぞれ14位、34位)。 “評価” だけでなく “人気” や “地位” も確固たるものとなった彼らは、「オーストラリア」の「サイケデリック・ロック」バンドであった過去から「グローバル」な人気を手にした「シーンの主役」の一組へとなったのだ。

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