[Album Review] Jamie xx – In Colour ~気取らないスタイルで描く最先端の音

今振り返ってみると、The xxが4ピース・バンドとしてどこからともなくシーンに現れたとき、一番地味で目立っていなかったジェイミー・xxことジェイミー・スミスがよもやこれほど影響力を持った存在になるとは、一体誰が想像できたであろうか。

The xxが2009年にファースト・アルバム『xx』をリリースした後、ジェイミー・xxは単独でフローレンス・アンド・ザ・マシーンやアデル、レディオヘッドなど数々のリミックスを手掛けることでひとりのトラックメイカー/プロデューサーとして認知されるようになり、2011年には故ギル・スコット・ヘロンの遺作となった『I’m New Here』を丸々一枚リ・エディットした『We’re New Here』と単独名義の初シングル『Far Nearer / Beat For』をリリースし、その地位をより確固たるものにした。そして近年ではドレイクやアリシア・キーズの作品にも参加するなど、アメリカのメインストリーム界隈からも声がかかるような存在にもなった彼が、世界中から大きな期待を寄せられる状況下で放った初のソロ・アルバムとなる『In Colour』は、その期待に応えて余りある傑作となっている。

ときに暗く重い、地下から這い出てきたかのような4つ打ちであったり、ときに色彩感覚豊かでトロピカルなサウンドであったりと、多種多様な表情をみせる本作は、ブリアル〜ジェイムス・ブレイクに受け継がれるダブステップの流れや、UKガラージといったイギリス国内の地下に綿々と流れ続けているダンス・ミュージックからの影響をたっぷりと感じさせながらも、決してそこに深くコミットすることはなく、飄々と垣根を横断してみせる絶妙なバランス感覚で成り立っている。以前から多用していたスティールパンの音色は「Ovbs」を除いてほとんど鳴りを潜め、その代わりかどうかはわからないが、全編に渡って元ネタの非常に分かりづらいサンプリングの多用が目立つ。ヒップホップやグライムへの造詣も深い彼らしくヤング・サグ(Young Thug)とポップコーン(Popcaan)を招いた「I Know There’s Gonna Be Good Times」では、ソウルフルかつファンキーなボーカルとラップを体温を感じさせないドライなビートで調理。以前から深い交友関係を築いてきたフォー・テットと共同プロデュースで仕上げたロミーが歌う「SeeSaw」では、ブレイクビーツ・ライクなドラムを導入。打ち込みと生音、そしてサンプリング・ボイスと生のボーカルをフラットに扱うことによって、それぞれを区別することが極めて困難なほどに自然に溶け込ませている。

イギリス国内でメインストリームにまでは届かないにしても、確実に年々熱量が増していっているクラブ/ベース・ミュージック・シーンを引き上げるだとか、そういった要素を取り入れることによって斬新なサウンドを作り上げようだとか、そういう気概は一切感じさせず、これまでに自身が吸収してきた音を自然な形でアウトプットしたかのような気取らない魅力に溢れた本作は、まるでジェイミー・xxの人間性そのものを象徴しているようでもある。そして、そのような野心のない飄々としたスタンスのアーティストが大きな支持を集めるというのも非常に現代的であるような気がしてならない。

余談だが、これまでのシングルで使用されていた、「X」を4等分した際のひとつをモチーフにした長方形と単色で統一されたアートワークの流れを引き継ぎ、そして結集させたかのような本作のアートワークを初めて見たとき、当たり前かもしれないが“自分はあくまでもThe xxの一員である”ということを彼が自ら主張しているような気がして、勝手に嬉しく思ってしまった。そういえば以前インタビューした際も彼が「バンドでの活動があくまでもメイン」と言っていたことを、ロミーから又聞きしたこともあった。現在ロンドンにある自分たちのスタジオで新作をレコーディング中だというThe xxは、今後もきっとマイペースに、そして外の喧騒などに影響されることもなく飄々としたスタンスで活動を続けていってくれることだろう。(Takazumi Hosaka)

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