[Album Review] Father John Misty – I Love You, Honeybear 〜妖精からヒップスターへ変身!

2012年の2ndアルバムツアー最後となる日本公演で脱退を発表した元フリート・フォクシーズのドラマー、ジョシュ・ティルマンことファーザー・ジョン・ミスティ( Father John Misty )の2ndアルバム。もともと加入前も既に本名で5枚のソロアルバムを出していたが、バンド加入のきっかけは創作に行き詰っていたときに誘われたからなのだとか。「それまで人のバンドのために楽器を担当するという考えはまったくない選択肢だったけど、彼らとならすばらしい経験ができると思った」と妖精との冒険の旅に出たのだという。

インタビュー等ではやはり彼らとの関係性を指摘されるようで、それに対し「彼らは既に2枚のアルバムの制作を完成していて、自分は教えてもらった通りに演奏しただけ。製作の面では一切タッチしていない」と答えているが、確かに音楽性の面から見たら、細密画のように緻密に構成された壮大なサウンドに快楽と改革を見いだすタイプの彼らとは全く違うので、繋がっていないのかもしれないが(来日時も大人しい妖精たちの中、ひとりパフォーマンスが大きくて、快活なお兄さんという感じで雰囲気違ったしね)、脱退後のファーザー・ジョン・ミスティ名義の音楽は明らかに以前よりもヒップな魅力をスパークさせているので(1stも最高)、クリエティビティにおいて刺激されたのは確実だろう。

もうひとつのインスパイア源は、サブポップのHPに自身で解説しているように奥様への愛。奥様のエマ・ティルマンはフォトグラファーで、昨年『The History of Caves』で監督デビューも果たした(もちろんサントラはジョシュが手がけた)。彼のMVにもよく出演しており、「Nancy From Now On」ではセクシーなSM嬢として出演している。ひと目見ればインスパイアリングな女性であることが分かるだろう。

そんな彼女に向けて生まれて初めて書いたというラブソング。「愛する人の目を通して、自分のエゴを殺すことを学んだ」とそのHPで解説しているように、「When You’re Smiling And Astride Me」では愛する人の前で自分の弱さを認め、「The Night Josh Tillman Came To Our Apartment」ではセクシャルな欲望と絶望を赤裸々に告白している。結婚前のとまどいを歌った「Chateau Lobby #4 (in C for Two Virgins) 」など、大きな支えを得て、自分のエゴに向き合い、苦しみながら本当の自分を発見していくプロセスは心打つものがある。

また、そのほかに作品を魅力的にしているのは、彼のコミカルな視点。ブルース・スプリングスティーンの「Born in the U.S.A.」をもじった「Bored in the USA」では、こんな歌詞がある。「ああ神様救い賜え、アメリカは無意味な教育を与えてくださり、クラフツマンスタイル邸宅のサブプライムローンもお与えくださった、もう嫌だ」と牧師のスピーチのように語りかける(そのすぐ後に笑い声を収録)。厳格なキリスト教の両親の元育ち(キングス・オブ・レオンみたいな感じ?)、幼いころは牧師になりたかったという彼。ボブ・ディランに出会い、人生が一変。宗教音楽しか聞けなかった反動から貪欲にロックを聞くようになったのだとか。名前のファーザー・ジョン・ミスティもそこから由来しているのだろう。この曲はルーファス・ウェインライトの「Going To A Town」に並ぶ、時代を象徴する傑作ヘイト・アメリカソングだと思う。(林麻美)

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Father John Misty

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