デイヴ・グロール『彼がロックシーンの王者たる理由(ワケ)』

「いまのロックシーンの中で一番人気あるバンドって誰?」キミがそう聞かれたら間違いなく答えの中の一つにフー・ファイターズは挙がっているはずだろう。今年で結成20周年を迎え、今月新作『Sonic Highways』をリリースしたバンドが、ここまで安定した人気を維持し、「王者」と呼ぶにふさわしくある要因を、中心人物デイヴ・グロールに焦点を当てて解き明かしていく。

text : 山本大地

数々のヒット作と受賞歴、歴史と実力が物語るバンドの地位

フー・ファイターズ、彼らがロック・フェスに出演するとき、いまやヘッドライナー以外でブッキングされることはあり得ないだろう。それは本国アメリカでも、ヨーロッパでも、南米やオーストラリア、ここアジアでも同じ。つまり彼らは世界規模でロックシーンの中でいまや「王者」と呼ぶにふさわしいバンドの一つなのだ。
今年で結成20周年となるが、現在、シーンの一線で活躍するバンドの中でここまで世界規模で安定した人気を維持し続けているバンドも珍しい。彼らと同じように90年代から活躍するバンドを見てみても、グリーン・デイもレッチリも、レディオヘッドも、ここ数年は存在感を示し切れているとは言い難い。
 
新作『Sonic Highways』が英米両国で初登場2位を記録したのも記憶に新しいが、彼らの作品は1995年のデビュー以降安定してヒットを続けている。ただ売れているからといって彼らのロックが商業的なものかといえば、いうまでもなくそんなことはない。それを証明するように、彼らはNMEアワード(6度ノミネート、デイヴの「Godlike Genius」を含む4度受賞)のようなインディ・ロック寄りのものから、グラミー(25度ノミネート、11度受賞)やMTVなどメインストリーム寄りのものまで数多くのアワードを手にしてきた。これだけ語っただけでも彼らが幅広い音楽ファンから支持されてきたことは歴然だろう。

幅広い層から支持される男、デイヴ・グロール

では、そのフー・ファイターズというバンドに、メンバーの交代はあったものの、20年間ここまで大きなスランプを経ることなくエンジンをかけ続けたものは何であろうか。間違いなくその答えの一つはバンドの顔であり、中心人物であり、バンドの主導権を握っているデイヴ・グロールとうい男だろう。もし「フー・ファイターズって誰だっけ?」と聞かれたら、「デイヴ・グロールがいるバンドだよ!」、そう答えるのも一つの模範解答であるはずだ。それだけ彼の存在感が現れる場面はバンド内での音楽活動に留まらないからだ。
 
彼の容姿を見れば、長髪で少し厳つくて迫力もあるし、演奏時には全力でシャウト、ドラミングのパワーももの凄い。そんな彼の人柄はそうした見た目や演奏中の雰囲気とは裏腹に、フランクで気さくだ。時にはジョークも混ぜる。ロックスターだからといって、セレブや大御所のように威張った態度一つ見せず、むしろこちら側にもしっかり敬意を払っている様子だ。そんな人柄もあり周囲のミュージシャンからの支持も強いし、彼自身も周囲の幅広い世代のアーティストへ強く敬意を示している。
 
彼はこれまで数多くのアーティストとの共演を果たしてきた。テネシャスDやクイーンズ・オブ・ストーン・エイジ、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズといったバンドへの参加はそのわかりやすい例である。他にも、2008年のウェンブリー・スタジアムでのジミー・ペイジとジョン・ポール・ジョーンズ、ハリケーン・サンディへのチャリティ・コンサートでのポール・マッカートニーなどロック史における重要人物から、最新作におけるベン・ギバード(デス・キャブ・フォー・キューティ)、ゲイリー・クラーク・jr、ザック・ブラウンらのような、デイヴより後の世代にあたるアメリカ国内各シーンの重要人物まで。これらの幅広い層のアーティストとの交流は、いかに彼が多くのミュージシャンから支持・尊敬を集めているかを物語っている。
同時に彼は周囲のミュージシャンへの関心、尊敬の念も強く示している。例えばレッド・ツェッペリンに関して、「ヘヴィ・メタルはレッド・ツェッペリンなしには存在しないよ。もし存在したとしてもゴミだろうね」と語ったり、最近では新人バンド、ロイヤル・ブラッドのブレイクに興奮していることも公言。常にシーンの現在を俯瞰し、様々なアーティストに敬意を示しながら交流するその姿勢もまた、彼が周囲から支持を集める要因だろう。

ハリケーン・サンディへのチャリティ・コンサートでNirvana & Paul McCartneyという形でポールと共演
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「使命感」、「責任感」。何事にもロック界の王者たる態度で臨む

新作『Sonic Highways』を「アメリカ音楽史へのラブレター」と語るデイヴ。収録曲8曲は別々の都市でレコーディングされ、同時にその地の音楽史をその地ゆかりのミュージシャンにインタビューしながら追ったドキュメンタリーも作られた本作。自宅のガレージで録音した前作『Wasting Light』、伝説のスタジオに迫ったドキュメンタリー『サウンドシティ』の制作を経て、「レコーディングの環境がその結果に影響すること」、「作品を作るために結集された人たちの偉大さ」を実感したことがきっかけだったという。「スタジオやその土地、それらを支える人たちをもっと称えなくては」、そうした「使命感」が彼を本作のアイディアの実行を駆り立てたのだろう。

デイヴのそうした「使命感」とも取れる態度はこれまでいろいろな場面で見られてきた。ここ数年のロックが衰退しつつあるという見方に対しても「俺が生きてきた世界ではロックがなくなったことなんてないよ。ほんとに知りたいのなら、AC/DCの連中に『ロックは死んだのか?』って聞いてみればいいさ」と一蹴。他にもリアリティ音楽オーディション番組への批判的なコメントを残したり、常にロックの現状に対して関心を抱きながら、「ロックの地位を何とかしなくては」、そんな、使命感と同時に責任感とも取れる姿勢を示している。
さらに、2011年にはカンザスシティで、LGBTなど性的少数者の人々への差別や排外主義的活動を行う宗教団体、ウエストボロ・バプティスト教会の抗議デモの標的にされた際には、ユーモアたっぷりのビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=dEZVI7ng61g)を公開、更に団体を前に同性愛者を応援する曲「Keep It Clean (Hot Guns)」を披露することで、見事団体を返り討ちにし、同時に同性愛者の権利も訴えた。この他、地球温暖化、癌などの病気、孤児関連など様々なチャリティ事業への参加にも積極的で、常に音楽活動以外の部分でも自分の主張をしっかり表明し、存在感を示し続けている。曲を作って演奏する、それ以外の部分でのこうした態度も彼が尊敬される一因だろう。

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いい作品を作り続けるだけでなく、音楽そのものや、周囲の人々への敬意を示す態度も忘れず、同時に音楽以外の部分でも「使命感」や「責任感」を持って自分の主張を明快にする、その姿勢こそが、彼を現シーンでの真の「王者」たらしめているのだろう。そんな彼の久々のフー・ファイターズとしての来日を心待ちにしたい。

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