[Album Review] Iceage – Plowing Into The Field Of Love ~アイスエイジが3枚目で見せた大きな成長

アイスエイジ( Iceage )というバンドについて語る時には、必ずといっていいほど、そのサウンドの影響源である「ポストパンク」や「ハードコア」という言葉と共に、「退廃的」あるいは「虚無主義」などの言葉を用いてそのダークな雰囲気が表現されてきた。

しかし、本作ではどうだろうか。ファースト・シングルであった「The Lord’s Favorite」のミュージックビデオをチェックしてみてほしい。そこには髪を伸ばし、若いころのニック・ケイブを彷彿とさせるボーカルのエリアスがいる。彼は色っぽくこちらを向きながら、彼の過剰なまでの「自信」を、狂おしく歌いきる。もし初めてアイスエイジを聴く人がこのビデオと歌詞を見たなら、前述のような過去のイメージは思い浮かばないかもしれない。
デンマークのコペンハーゲンから10代で現れたこの4人組は、このサード・アルバム『Plowing Into The Field Of Love』で見事にこれまでの彼らの路線を脱し、以前からのファンの多くが予想していたものとは全く異なる方向へと大きく舵を切った。
サウンドの面に関しても、前述の通り最初に公開されたトラックである「The Lord’s Favorite」のロカビリー調のサウンドを聴いただけで多くのファンが彼らの進化に驚いたであろうが、これはあくまでも本作における大きな変化のほんの一部に過ぎない。「How Many」、「Abundant Living」では大胆にピアノが、更に「Glass Eyed Dormant And Veiled」、「Against The Moon」などではホーンセクションが加わる。そしてエリアス自身のベルリン滞在について書かれたというタイトルトラック「Plowing Into The Field Of Love」は、ダウンテンポで美しいコード進行が土台になっており、これも彼らの若さからくる初期衝動を基に勢いのあるサウンドを展開していた前作までにはなかったものだ。
こうしたサウンドの変化に加えて、本作ではアルバムの随所に4分半を超えるような曲もみられ、アイスエイジの一つの代名詞でもあった1~2分の短い曲は影を潜めている。これらは、彼らがキャリアを重ねる中で経る必要があったステップの一つなのだろう。しかしボーカル、サウンドの激しさの中に彼らの個性がしっかり残っている点で、確実に彼らなりの方法で昇華できており見事である。
全体的に見れば、歌詞のダークさ、攻撃的なボーカルなどには大きな変化があるわけではないし、エリアス自身、過去の作品と比べて「ポジティブになった」あるいは「ポップになった」との指摘については否定している。しかし、少なくともリスナーが受ける印象はこれまでとは大きく異なるだろう。本作での変化を経ることで、20代を邁進する彼らがどこへ向かおうとしているのかますます気になるところだ。 (Daichi Yamamoto)

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Iceage

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