Blur @日本武道館 2013/1/14

ブラー(Blur)待望の来日公演の2日目、日本武道館公演の模様をとらえた。

 あれから4年半、2008年12月の再結成以来、日本のブラーファン、いやロックファン全てが待ち望んだ日が遂に来たのだ。更にいえば前回の来日は2003年のサマーソニック。しかし、このときはギタリストのグレアムが脱退していた時期でフルメンバーではない。なので、更に遡れば最後のフルメンバーでの来日となる1999年のフジロック以来の瞬間と言っても過言ではないだろう。
 遂に実現した久々の来日公演。チケットは即日どころか5分で完売したといわれている今回の武道館公演。追加で発表されたZepp Divercity公演も同様にすぐに完売していた。どれほどまでに日本のファンが待ち望んでいたかはこれだけで明らかであろう。思えば昨年来日が予定されていたのだが、主催者側の運営が上手くいかず中止に。本当に「やっと」である。
  
 前置きみたいな内容はおいて本編だが、キャリアを総括するベストといえるようなセットリストで、それに相応の素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。(セットリストは本文の後を参照)
 
 
 開演予定時刻の19時から数分、ハイドパーク公演同様ウエストウェイがバックに移されたステージには、直前までスタッフが歩き回っていた気がするので、照明が落ちた瞬間はびっくりだった。メンバーが出てくると、大歓声と共に何か感慨深いような思いに覆われる。
 海外の公演でも多いが、1曲目はいきなりのGirls & Boys。もちろんブリットポップの代表バンドの彼らだが、その中でも特にポップな曲で彼らの全盛期を象徴する曲の一つだ。オーディエンスの反応はといえば、久々に日本に来たブラーへの声援を大きく送っていた矢先に、という感じで曲が始まり、すぐに縦ノリ。デーモンとのコール&レスポンスもばっちりだ。その後もThere’s No Other Way, Beetlebumと代表曲を余りなくオープニングに入れ、オーディエンスの高揚感が収まらない熱いスタートとなった。
 
 少し話はずれるかもしれないが、There’s No Other Wayはマッドチェスター期の音楽の影響が見え、Beetlebumはグレアムのアメリカ・オルタナギターロックからの影響が見える曲、タイプは全然違うのだがブラーで括ってしまうと、そんなことを忘れさせるようにまとまる。それはいくつかのそういったジャンルをまとめた、「ブラー」という一つの音楽ジャンルさえ形成させてしまうのではという程に見事なのだ。
 
 日本のファンには少し馴染みが薄いかもしれないB面の曲、Young & Lovelyから彼らの実験的音楽へのアプローチが見られるCaramelまでの流れは、少しオーディエンスが大人しく感じられたかもしれない。しかし、それとは対照的にパフォーマンスの方は、いい意味でしっかり力が入りきれている。演奏自体は完璧とは言えないかもしれないが、デーモンのオーディエンスの煽り方、グレアムのBeetlebumやTrimm Trabbでの絶妙なノイズギターなどはほぼ満点をあげたい。特にTrimm Trabbはコードリフが印象的な曲であるが、しっかりとアコースティックパート、エレクトリックのパート、エモーショナルにノイズを出すパートと会場の照明も含め、当然のことかもしれないがメリハリがしっかり。デーモンはと言えば、アップテンポな曲では終始ステージ上を飛び跳ねたり、ペットボトルの水を客席にかけたりとかなりご機嫌の様子だった。少し落ち着いていたオーディエンスを飽きさせなかったのではないかと思う。

 グレアムがボーカルのCoffee & TV、後半のコーラス部分が思ったほど長くなかったが、大合唱が起こったTenderとTo The Endのバラードというこれもまた豪華な3曲を挟み、本編一番の盛り上がりともいえる部分に入る。オアシスのRoll With Itとの1位争いに勝利したことでも有名な、全英1位ヒットのCountry Houseとフィル・ダニエルズ(この1曲のためだけにツアー同行しているのだから凄いような)参加のParklifeだ。Country Houseではデーモンが客席のファンに駆け寄り、Parklifeでは、フィルとデーモンがステージを走り回り、オーディエンスも飛び跳ねたり大合唱をするのをやめられない。盛り上がりは最高潮であった。まさに本編のハイライトを作り上げた。その後も、途切れなくヒット曲が、End of A Centuryへとつながれていく。本編最後は、エモーショナルなバラード、This is a Low。ギターソロが終わり、最後のコーラスに向かう瞬間はとても感動させてくれた。

 This is a Lowのギターが鳴りやんで数分、メンバーが再び登場する。デーモンとグレアムが手をつなぎ登場したのは印象的であった。更に最後のSong2のイントロでは、デーモンがグレアムとアレックス、更にデイブにハグをする。不仲であった時期があったとは思えぬ素晴らしい関係を、再結成から5年たっても築き続けているのだ。そして同時に本公演は現在発表されている最後の公演。「いままでお疲れさん」という気持ちも込められていたのではないかと感じてしまう。そう思うとより感慨深いものだ。

 アンコール1曲目は、日本のためともいうべき曲Yuko & Hiroだ。「我々は会社で働いている。いつも彼らが守ってくれる。」という日本語コーラス部分をしっかりオーディエンスに聴かせるデーモン。MC では、日本を「革新的なのに、一方で伝統も融合させているところに敬意を持つよ。」と称賛。次の美しいピアノバラード、Under The Westwayを「イングランドについての歌。(日本も島国だから)これは日本についての歌だとも言えるね。」と導入。日本へ、イギリスへ、デーモンが思いを込めて歌うこの2曲の流れは実に素晴らしかった。For Tomorrowの「Na Na Na~」のコーラスもしっかり会場が一つになり、雰囲気そのままに、これもデーモンの作曲能力の産物The Universal、そして本日一番の盛り上がりの最終曲、Song2へとつながれる。このクラシックギターリフを持つ曲、やはりこの曲だけは、音圧がダントツで違った。イントロからオーディエンスは「Woo!-Hoo!」と応える。武道館に爆風が吹き荒れているかのような熱を感じた。

 

 もちろん今のこのバンドは、グレアムを始め演奏そのものも素晴らしいのだが、それ以上に彼らの書き上げる曲の人々を夢中にさせる絶妙なポップネス、それを上手く利用するデーモン、バンドのライブの盛り上げ方。それに尽きていると思う。(武道館の場合は1万4千人ほどのキャパだが、)時として5万人やそれ以上にもなるオーディエンスを一つに出来る実力はそう沢山のバンドが持てるものではない。90年代のライブと比べると、まだ現在進行形でまだ成長を続けているのではないかと思ってしまう(もちろん過去があまりうまくなかったという見方も出来るが)。

 彼らが、再結成をしてから5年が経つがその間はシングルが1枚出ただけで、それ以上のアルバムや新曲は出ていない。もちろん自分も、再結成してライブを重ねお金も稼ぎ、新曲を作らないような態度のバンドは肯定できないこともある。それでも彼らが「ノスタルジーに浸っているだけ」とか「金もうけのためのリユニオン」というような言われ方で批判されることもあまりなく、結果5年もの間ライブを続け、結果的にはライブ作品を2枚も出していることは特殊かもしれないが、そこには、ライブバンドとしての実力が大きく貢献しているだろう。
 本日のオーディエンスはといえば20代から40,50代まで幅広かった。一番多かったのは、彼らの全盛期にファンになったであろう30代や40前後のオーディエンスであるが、それと同じくらい、しっかりと目に焼き付いているのが若いファンの姿である。再結成してからもただの「見てみよう」程度で終わらぬ、熱狂的なファンも獲得できているのだ。それだけに若いファンからも来日を待望する声がかなり大きかった。出来るだけ100点に近いパフォーマンスで、まだまだ新しいファンを巻き込もうというアティチュードそのものも、いい意味でリユニオンツアーが長引いていることにつながるだろう。
 ブラーは再結成が無駄ではないと自信を持って言える偉大なバンドではなかろうか。

(text:山本大地)

 (オフィシャルサイトから当日の写真をチェック可)

セットリスト
SE:Theme from Retro
1:Girls & Boys
2:There’s No Other Way
3:Beetlebum
4:Young & Lovely
5:Out of Time
6:Trimm Trabb
7:Caramel
8:Coffee & TV
9:No Distance Left to Run
10:Tender
11:To the End
12:Country House
13:Parklife (with Phil Daniels)
14:End of a Century
15:Death of a Party
16:This Is a Low

Encore:
17:Yuko & Hiro
18:Under the Westway
19:For Tomorrow
20:The Universal
21:Song 2

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