MGMT @IMP HALL OSAKA, FEB 26, 2011

MGMTほど「正体」のよくわからないアーティストもそういない。(「正体」などというものがあれば、であるが。)

いわゆる「スター願望」や「メジャー指向」とは距離を置いているように見えるのに、華々しくメジャーレーベルからのデビューを飾り、ひとたびデビューすると音楽界隈にとどまらず多方面からラブコールの絶えない人気者へあっという間に成り上がった。にもかかわらず、ちやほやされる自分たちを皮肉っぽい目で見つめる冷静さを持ち、2ndアルバムでは熱狂する周囲を「あえて」突き放したような作品を発表。聞き手の理解など求めない気難しい芸術家のオーラをまとったようでいて、その音はあくまでも大衆を魅了するポップネスを含んでいる。MGMTって一体どんなアーティスト?どうも一言で語れない。そんなもやもやを抱えつつ、ジャパンツアーのトリを飾る大阪公演に臨んだ。


結論から言ってしまうと、MGMTはやっぱり謎だらけ。ライブの幕開けに選んだのは、2ndアルバムから『Siberian Breaks』、途中で何度も拍子やテンポの変わるオペラティックなナンバーだ。

普通ならお客さんを一気に引き込むためにアッパーなチューンにするところ。案の定、始まった瞬間、最前列にしっかと陣取るアンドリューファンの女の子たちや、熱気むんむんで前方につめたお客さんたちの戸惑いがさざ波のように広がった。その後も、『Time To Pretend』や『Electric Feel』など、1stからの人気曲を散りばめながらも、決して前のめりに踊らせないセットリストで終始じっくり聞かせるライブという感じ。ただ、想像していたよりも、ライブの似合う「バンドサウンド」であったことはとても印象的だった。それも「ド」のつくサイケデリックな音だ。ずっとサポートを務めてきたドラムのウィル、ベースのマット、ギター他のジェームスが2ndから正式メンバーとなり、5人編成のバンドになったということで、ライブの音作りもそれをより意識したものになったのだろう。曲間には、ジャムセッションのようなインストが挟まり、ジェームスのギターが、ベンのオルガンが、ここぞとばかり雄たけびを上げる。ずっと目を閉じ、1曲1曲を丁寧に歌い込めるアンドリュー。『The Youth』や『I Found A Whistle』のような曲では脱力系のボーカルが子守唄のようなぬくもりをもって響いてくる。リアルタイムで経験していないけれども、70年代アメリカのロックフェスってこんなピースフルな雰囲気だったんじゃないかな。

今回、影の立役者は背景スクリーンに次々映し出されるVJワークと照明エンジニア。 



思えば、入場規制までかかった2010年フジロックのMGMTのステージは、苗場という屋外のロケーションに力を借りた部分もあったのではないだろうか。ライトアップされた夜の幻想的なホワイトステージ、深い森、『Kids』が始まったときに強く降りだした雨、すべてがMGMTを祝福するようにあの夜のライブを演出してくれていた。今回、屋内のホールという異なる環境下で、映像と照明の視覚効果によるサイケデリアの表現が果たした役割はとても大きい。ステージが進むに連れ、音と映像の魔法にかかり、うっとりと身体をたゆたわせるお客さんが増えると共に、焦らすような展開に苛立ちと失望を隠さないお客さんもいたようだ。客席からは「早く『Kids』やれー」とヤジが飛ぶ瞬間さえあった(2ndアルバムのツアーだから2ndの曲が多いのは当然なんだけども)。

臆せず淡々と進むセット、そしてトリ前唐突にその瞬間はやってきた。『Kids』、本当に唐突。しかもバンドメンバーは舞台袖にはけ、ipodでオケをプレイしてベンとアンドリューがふたりで歌うカラオケスタイル。

投げやりとも受け取れるこのプレイスタイルは、「人気曲、やればいいんでしょ」という態度にもとれるし、バンドになった新生MGMTの曲として捉えていないのかもしれないという憶測もできる。或いはそんなのは深読みで、引っ張って引っ張って最後に持ってくる単なる演出だったような気もする。兎にも角にも、ライブを通して唯一最前列のお客さんと触れあいに行くパフォーマンスも見られたこの曲で、フロアのボルテージは一気に爆発し頂点へ達した。トリは『Congratulations』。興奮冷めやらぬままの観客をクールダウンさせると、MGMTはスマートな笑顔を見せてステージを後にしたのだった…。

大きな歓声に応えて再登場したアンコールでは、意表を突かれるジェームスの美しいオカリナソロから始まる『Pieces Of What』、続いてオーラスは『Brian Eno』。『Brian Eno』ではサビのコールアンドレスポンスで再びフロアを盛り上げ、最後のサビ前のブレイク部分では、フラッシュライトに、たくさんのノイズ、クラッシュ音、不敵な笑い声…。映画の続編を予告する「To Be Continued…」が頭に浮かぶようなサウンドエフェクトがしばし流れ、そのままなだれ込むように舞台は幕引きとなった。60-70年代のサイケデリック・ロック、80年代のインディ・ポップを咀嚼し、そこからオリジナリティ溢れる2枚の素晴らしいアルバムを生みだしたMGMT。この長い長いツアーをもって彼らの第1章と第2章は完結した。つかみどころが無いということはつまり、自分たちの音楽性を狭い枠に閉じ込めてしまうことなく、まだまだ無限に進化を続ける、万華鏡のような可能性にあふれたアーティストである、ということだ。続くMGMT第3章でどんな作品をとどけてくれるのか、これからも期待して見守ってゆきたい。

Text: Minae Tani
Photo: Mitch Ikeda(ミッチイケダ)

[SETLIST]
01. Siberian Breaks
02. Time To Pretend
03. The Youth
04. Flash Delirium
05. Weekend Wars
06. I Found A Whistle
07. Song For Dan Treacy
08. Of Moons, Birds and Monsters
09. Electric Feels
10. It’s Working
11. Future Reflections
12. The Handshake
13. Destrokk
14. KIDS
15. Congratulations
++++ENCORE++++
16. Pieces of What
17. Brian Eno

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