Antony and the Ohnos 10/02/12@Akasaka Sogetsu Hall
Posted on 2月 14, 2010
Filed Under live review
これは、ライブパフォーマンスというよりコンテンポラリーアート。気と感情が渦巻く、人間の表現が作り出した異次元の空間!相当なチケット争奪戦だっただけに涙を呑んだ方も多いと思う。うまく伝えられるかどうか自信はありませんが、さっそくレポートしてみようと思います。
Text:Mami Hayashi
ANTONY AND THE JOHNSONSの最新作「The Crying Light」の衝撃的なジャケット、まるで生きた化石のような老婆が日本人舞踏家であるという話は有名だと思う。
その白塗りの老婆は実は男で、名前は大野一雄。暗黒舞踏というジャンルを確立した土方巽と共に活躍し、現在100歳の誕生日を迎えてもなお舞台に立ち続ける生涯現役を貫く舞踏家だ。
アントニーと彼の出会いはアントニー16歳、フランスの学校に通っていたとき。彼は町で大野氏の公演のポスターを見て、その美しさに胸を打たれ、ポスター張りのおじさんからそのポスターを1枚もらい、寝室に飾っていたのだそう。そのときは名前すら知らなかったけれど数年後彼のパフォーマンスの映像を見て感銘を受け、それがあの寝室の彼だということに気付きその偶然に運命を感じたのだという。
今回の公演「Antony and the Ohnos -魂の糧-」の出演者は5人。いや6人。まずアントニー、そしてアントニー&ザ・ジョンソンズのギタリスト、ロブ・ムース。彼はスフィアン・スティーブンスや坂本龍一とのコラボレーションでも有名。そしてミュージシャン、ウィリアム・バシンスキー。舞台演出・舞踏を大野一雄の息子、大野慶人が手がけ、アントニーのNY時代のパフォーマンスグループの一員で、PVにも出演しているダンサー・ジョアンナ・コンスタンティンも出演。大野一雄は映像(彼主演の映画、「O氏の死者の書」)という形で参加している。
ライブは3部構成。まず白い布で覆われた舞台の袖から、ダースベイダーのようなメイクに身体じゅうに部族の刺青のような文様を施したほぼ裸の女性、ジョアンナ・コンスタンティンが登場。ウィリアム・バシンスキーの音楽に合わせ、ゆっくりと羽ばたきながら移動する。指の先まで地面を這う蛇のような細かい動きで、音のない空間で観客全員の視線が彼女の身体と動きのみに集まっている様は、まるで昆虫の蛹の羽化を見守っているかのよう。ダンスについては皆目無知だが肉体と動きだけの表現方法というものもあるんだな、と関心した。チュールやレースで出来た衣装も昆虫の羽根のようで、またそれを舞台に脱ぎ捨てるパフォーマンスも、羽化を想像させた。
彼女が舞台袖に消えると、舞台にかけられた白い布に映像が移される。大野一雄の映像だ。白塗りで貴婦人のような衣装を着た老人が、瓦礫の中から生まれるようなパフォーマンスをしたり、草むらの中をパラソルを持ってうずくまったり。彼については顔と名前だけ知っていた。というのも、三島由紀夫が好きなので、彼を収めた写真集「薔薇刑」等で有名な写真家、細江英公の写真展に行ったとき、大野一雄を収めた写真を数点見たことがあったのだ。ベッドに横たわる老人が化粧をして明治期の貴婦人のような衣装に身を包んでいる写真に恐怖を感じ衝撃を受けた。
彼をおさめた映像は今回のショウで初めてみたが、やっぱり恐怖が大きかった。圧倒されると同時に怖かった。目もうつろに我を失って狂気の中にいるような彼の動きは舞踏にとりつかれてこうなっているのか、こういう表現なのか判断しようがなく、前者な気がして怖かった。そのほか最後に流された映像では、養豚場の子豚の中に飛び込み、地面に寝転がって豚の乳首に一心不乱に吸い付いているのだから!舞踏というのは、漢字の通り、舞って足を踏み鳴らす、そういう表現方法だと思っていたから、この得体の知れない人たちの動きに得体の知れない感情が沸き起こった。
そして白い布が上がる。そこにはグランドピアノとアントニー。となりには椅子に座ったロブ・ムース。アントニーを囲むように、椅子に座った大勢の人たち。(どうやら当日券で入ったお客さんらしい。羨ましすぎる!)やさしくて同時に胸を鷲掴みにされるような至福の声が会場を包み、曲が始まると同時に音もなく舞台袖から現れる大野慶人。白装束に身を包み、手には真っ赤な薔薇を持っている。ゆっくりとした動きでうずくまったり立ち上がったりする。よく目をこらすと身体が小刻みに震えている。アントニーは彼の動きひとつひとつに目配せし、ピアノのリズムを彼に合わせる。
「You Are My Sister」のときに現われた大野氏は上半身裸。丸坊主で全身白塗りの姿でねっころがったり、胸をかきむしって空に何かを求めるかのようなポーズをしたり。どうやらアントニーの曲に合わせた彼の解釈があるようだ。
でも私にはこの音楽と舞踏の対話は、アントニーの音楽のための大野氏の踊り、というより大野氏にあわせたアントニーの音楽、という気がした。というのもアントニーは熱心に彼に熱い視線を送りながら、彼の動きに音楽を合わせているような気がしたから。途中感極まってアントニーが思わず口を押さえるシーンもあった。
「Cripple And The Starfish」では突然大野氏が舞台袖から猛スピードで駆け出し高くジャンプ。しかも頭にはおっかない緑色の馬の被り物をしている。感情と共に高まる声量に、ピアノのフォルテの連打にあわせ大野氏は中腰で手綱を持つようなポーズで夢中で腰を揺らしている。どうやら彼のこの曲の解釈は乗馬らしい。
「My Lady Story」では貴婦人の帽子を真っ白な丸坊主な頭に載せ、何を思ったか全身鏡を抱え登場。観客に向け光をチラチラさせたり、アントニーとロブの演奏している裏側を映したり。この曲が大好きなのと、アントニーの声と美しすぎるバイオリンのストリングスと、そして大野氏の不思議な動きと。なんだか涙を流している自分がいた。何も悲しいわけでも嬉しいわけでもないのに、理由がまったくわからない。こみ上げてきて正体不明の感情が渦をまいてあふれ出して止まらない。
大野一雄にささげた曲「The Crying Light」での大野氏は紋付・袴を着て手には風車。舞台を走り回る。
「Can’t Help Falling In Love」のカバーでは白塗りを落とし、きちっとしたスーツを着用。手にはミニ大野一雄氏。腹話術士のような格好だがもちろん声は出さない。一雄人形に躍らせたり挨拶させたりしている。
最後にもう一度大野一雄氏の映像と、そして最高のベッドタイムソング「Hope There’s Someone」。
演奏が終わると同時に会場では耳が避けんばかりの拍手とスタンディングオベーション。拍手は一向に鳴り止まなかった。
-Set List-
1. Her Eyes Are Underneath The Ground
2. You Are My Sister
3. Cripple And The Starfish
4. Epilepsy Is Dancing
5. Daylight And The Sun
6. My Lady Story
7. Another World
8. The Crying Light
9. Can’t Help Falling In Love
<E.C.>
Hope There’s Someone
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2 Responses to “Antony and the Ohnos 10/02/12@Akasaka Sogetsu Hall”
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アントニー 美しかった… 涙… Antony and the Ohnos もっともっと見ていたかったのです….. 単独公演ないのかな…Antony and the Johnsons
リンクありがとうございます!本当に、日本でしか実現し得ないスペシャルなライブでしたね。アントニーの溢れ出る人間性の豊かさにも感激しました。
こんな素敵なライブを企画して下さったプロモーターさんに感謝です。
ANTONY AND THE JOHNSONSとしても絶対来日してほしいですね!またはルー・リード来日についてくるとか><!