CAT POWER @10/01/17 Shibuya O-EAST

Posted on 2010.01.19 
Filed Under live review

なんて甘美な世界だろう!
こんな幸せな夜、世界中に感謝したくなる。
キャット・パワーことショーン・マーシャル、ブルース畑最強のバックバンド、The Dirty Delta Blues Band(ブルースパンクトリオBlues ExplosionのギタリストJudah Bauer、Nick Cave等のバックも務めるインストゥルメンタルバンド、Dirty ThreeのドラマーJim White等)を従えて、の来日だ。

TEXT:Mami Hayashi

今回の来日は、6作目「YOU ARE FREE」以来実に6年ぶり。その間に初めて彼女の音楽に出会った人もいるだろう。もちろん長らくのファンも。
私の場合は、前回下北沢の小さなバーでのライブは行かなかった。彼女のライブは相当不安定、という噂を聞いていたからだ。
もともと自分の音楽傾向として、シンガーソングライターが好きなので、彼女の音楽はお気に入りだったけれど、中でも06年作「THE GREATEST」は格別に好きだ。
ブルースについての知識はてんでないけれど、それまでのどこか素朴なつくりとどこか不安定な部分が魅力的だった彼女のテイストとは違くて、ブルースの歴史に敬愛の意を示しながら丁寧に作り込まれたこのアルバムに彼女の「強さ」を感じたからだ。
なぜシンガーソングライターが好きかというと、バンドよりもアーティストが一個人としてより身近に感じられるから。真夜中に独り薄明かりの中で聞く音楽といったらシンガーソングライターの音楽。真夜中は彼らと向きあう時間なのだ。
だから好きなバンドの好きなメンバーに対する思い入れとシンガーソングライターへの思い入れは当然違う。
会場も私のように彼女が「大切な人」である人が多かったのだろうか、彼女が現れると暖かな歓声が沸き上がった。
初めて見る実際の彼女は、大きな人だった。背は高く、よくいるのっぽの痩せ、ではなく大きな身体にどっしりと肉がついている。とても豊満で肉感的。決して年齢に無理をしない身体というか。カーヴィ−なボディライン、どっしりとしたおしり。男の人にはたまんないんじゃないかと思う。
服装は彼女がよく好むアーミーシャツ。本来は男性のものなはずなのに彼女のムチムチした身体にどうしてこんなに似合うのか。胸元を大胆に開け素肌に黒のネクタイ、厚めの前髪にポニーテール。何の飾りもなくシンプルでいて完成されたカッコよさ。
初めて聞く彼女の生の歌声は、CDと全く別物だった。彼女の煙草やアルコールで焼けただれた様を想像させるハスキーボイスが大好きだが、実際の声はもっと甘い。ハスキーであるが故に甘さがより引き立つ。CDで聞く声と比べてよりハスキーな部分は低く、より甘美で、歌は安定している。
“バック”だなんて恐れ多い!ブルースの名手達の息のあった演奏と絡み合うサウンドスケープは、極上に美しく、とろけてしまいそう。
セットは2009年作、彼女の大好きな曲ばっかりを集めた最新作『JUKEBOX』を中心に計24曲。
特に絶妙だったのが、Dirty Threeのメンバーのドラム。 Janis Joplinのカバーが有名な”Woman Left Lonely”の曲中、間髪に入るスクラッチノイズが一体何の音だろうと思っていたのだが、この音はドラムが出していた!ドラムスティックの先端が箒状のワイヤーで出来ていて、それを擦って「サワサワ〜」という音を出していたのだ。
今まで力強いドラムの演奏に驚かされたことはあるが、彼のプレイの繊細さと来たら!こんなの初めてで感心してしまった。
大好きな曲“The Greatest”では、すごい形相で体中から歌を表現する彼女の姿に、歌声に、本当はどうだか知らないけれど、情熱的でいて、冷たくて、弱いけど強くて、大胆だけど、実は恥ずかしがり屋で…そんないろんな姿を見た気がした。
個人的には、『JUKEBOX』最後の曲、 Joni Mitchellの”BLUE”がオリジナルよりも好きなので、演ってくれなくて残念だった。
でもライブが不安定?とんでもない。本当に素敵なショウだった。大満足。
ライブの終演には彼女が舞台裾から無数の花束を抱えて登場、観客に花を1本1本投げつけはじめた。菊、ダリア、カーネーション。興奮冷めやらぬ客席に優しい花の香りが舞った。

Set List

1 House of the Rising Sun (The Animals cover)
2 Dreams (Fleetwood Mac cover)
3 Woman Left Lonely
4 Silver Stallion (The Highwaymen cover)
5 Lost Someone (James Brown cover)
6 Makin’ Believe (Kitty Wells cover)
7 Lord Help the Poor and Needy (Jessie Mae Hemphill cover)
8 Song To Bobby
9 Metal Heart
10 Blue (Joni Mitchell cover)
11 She’s Got You (Patsy Cline cover)
12 Don’t Explain (Billie Holiday cover)
13 Fortunate Son (Creedence Clearwater Revival cover)
14 Ramblin’ Woman(Hank Williams cover)
15 Dark End of the Street (James Carr cover)
16 Where Is My Love
17 The Greatest
18 Lived in Bars
19 New York (Frank Sinatra cover)
20 (I Can’t Get No) Satisfaction (The Rolling Stones cover)
21 Sea of Love (Phil Phillips cover)
22 Angelitos Negros (Roberta Flack cover)
23 I Don’t Blame You
24 Surf Song

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