Manners / Passion Pit
Posted on 2009.05.29
Filed Under album review
一体全体どうしてこいつらはこんな聴いてる方が恥ずかしくなってしまうほどロマンチックな楽曲を連発できるのだろうか。
ケンブリッジ出身、ヒゲと眼鏡ばかりの冴えないルックスの5人組、パッション・ピット。なんでも“メンバーが彼女へのプレゼントとして製作した音源”がレーベル契約に至るキッカケになったというエルヴィス・プレスリー並に胡散臭いエピソードの持ち主なのだが(ちなみにエルヴィスの場合は母への誕生日プレゼントがデビューのキッカケという逸話がある)、そんな彼らの名前を広く世界に知らしめるキッカケとなったのは何といっても昨年9月に発売されたデビューEP「Chunk Of Change」の存在。特にその中でも珠玉の名曲「Sleepyhead」がブロガーの間で真っ先に火がつき、続いてクラブ・シーンでもアンセムとなるほどの大ヒットを記録した。
そんな彼らのデビュー・フルアルバムが本作。当然の事ながら、発売前から世界中の音楽ファンが待ち侘びていた期待作であり、つまりは相当なプレッシャーを背負いながらの製作にならざるを得ない訳で、個人的にはその点が少しばかり気にもなっていた。
しかし、蓋を開けてみればこれまたビックリ! とことんマイペースに、あたかも自分のベットルームでパソコンを使い、コーヒーでも飲みながら作ったのではないかと思ってしまうほど“良い意味”で肩の力の抜けた楽曲が勢揃いしている。新人なんだからもう少し固くなっても良いんじゃ、と思わず苦笑してしまう程だった。僕の心配は完璧なる杞憂だった訳だ。
基本的な路線はEPと変わらず、なによりも“歌”に重点を置いたベッドルーム・エレクトロ。一足先にリードトラックとして公開された4曲目「The Reeling」を筆頭に、フックのあるビートで聴き手の体を揺さぶるダンサブルな楽曲から、6曲目「Swimming In The Flood」のような甘くて切ないミドルテンポのバラードまであり、楽曲のバラエティの豊かさやバンドとしての懐の深さを顕示している。
わかり易いメロディにベタな展開、さらには子供にコーラスを歌わせたり、ちょっと卑怯なほどロマンチックな彼らのサウンドは、遠慮無しに聴き手の心の琴線を揺さ振る。昨今のUSインディ、特にブルックリン勢に顕著な偏差値の高そうな難解な音楽性などは皆無だが、しかし、こんなにも笑って泣けて踊れるアルバムは一年で何枚も出会えるもんじゃないだろう。
何と言おうと傑作です。(保坂隆純)













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