Radiohead @ 10/5 さいたまスーパーアリーナ

もう、さすがにレディオヘッドともなると、本来なら全公演のレヴューを掲載しないといけないレヴェルなのかもしれない。

もう、さすがにレディオヘッドともなると、本来なら全公演のレヴューを掲載しないといけないレヴェルなのかもしれない。それは、今回の日本公演のセットリストを見ても明らか。公演日によって、オープニングもエンディングもガラッと違う、その日その日のオリジナルな曲目j群。しかもそれが毎回25曲。これ、延べの曲数にしたら40〜50曲のはず。これ、リハーサル、どれぐらいやってんだ?いや、リハーサルなどなくとも、「プロで食ってんだから、これぐらいは辺り前」といったところなのか?それにしても、ここまで即興に従った、本来のライブならではのセットが組めるバンドというのは、今は彼らとパール・ジャムぐらいのものではないだろうか?いや、パール・ジャムが基本、ベーシックなバンド・スタイルでのライブを行なうことを考えると、曲によってはプログラミングの類いが必要なレディオヘッドのライブはもっと複雑なはず。これが、「せ〜の」で出来るというのだから、この時点で他のアーティストと単純比較することはフェアではないというものだ。いや、それにしても10年前にも一回のツアーで2公演見させていただいているのだが、あのときはそこまで自由なセットリストではなかったので、この10年もの間の彼らのパフォーマーとしての成長(って、あの時のツアーでさえ、「OKコンピューター」だったんだけど)には本当に恐れ入る。

今回僕が足を運んだのは、さいたま2日目の日曜日。この日は「イン・レインボウズ」一曲目の「15ステップス」でスタート。これは今回のツアーではよくあるパターンだったのだが、2曲目にいきなり「OKコンピューター」1曲目の「エアーバッグ」。ここでいきなり大歓声。そして、続いて「ジャスト」「ゼア・ゼア」といった、ファンの間でも人気の高い代表的シングル曲が。滑りだしはかなりわかりやすく飛ばし気味。まるでグレイテスト・ヒッツを聴いているかのようだった。

この“あげモード”の次はグルーミーなモードに突入だが、この選曲の流れもうまい。「オール・アイ・ニード」「ピラミッド・ソング」。彼らの楽曲の中でも荘厳さにかけては屈指の名曲が続く様には体の奥が静かに興奮。続く「ウィアード・フィッシュ/アルペッジ」のアルペジオ・ギターと静かにせわしないドラムとの掛け合いも生で聴くとさらに味わい深い。続いては、トム・ヨークのクネクネ・ダンスが一層派手になったエレクトロ・タイム。ここで選曲された「ヘイル・トゥ・ザ・シーフ」からの「グルーミング」と「ミスソマトシス」という選曲はやや意外だったが、こういう思わぬチョイスもライブならでは。続いてニュー・アルバムからの「ファウスト・アープ」が序曲になる形での「ナイヴス・アウト」「ヌード」。。この静溢な流れも絶妙。続いてひときわ湧いたのは「オプティミスティック」。「キッドA」の中では比較的わかりやすい、ファンも多いこの曲、これまでのツアーではあまり目立ってきてなかったが、この反応を聴く限りはやはり人気のよう。

ただ、この後の曲の続きはやや一貫性を欠いた印象も。ニュー・アルバムからの「ジグソー・フォーリング・イントゥ・プレイス」、今や彼らのライブの山場の重要曲とも言える「イディオテック」と来て、「もう、このテの曲はやらないのでは」と思われていた初期の歌もの名曲「フェイク・プラスティック・トゥリー」に、ニュー・アルバム随一のアッパーなロック・トラック「ボディスナッチャーズ」。「フェイク〜」は正直僕もかなり高揚したが、「イディオテック」での陰鬱な興奮の次にこの曲というのは、やや食い合わせに無理があるかな、という気がしないでもなかった。

アンコールは「アムニージアック」の「ライク・スピニング・プレイツ」から、ニュー・アルバムのクロージング・ナンバー「ヴィデオテープ」。「これでアンコールの1回目、終わるかな」と思いきや、特大キラー・チューン「パラノイド・アンドロイド」。反応的には、さすがにこの日一番の盛り上がりか。続いて、新作からの人気曲「レッコナー」、そして、トムがエレクトリック・ピアノの前に座っての、彼らのライブ定番のシメ曲「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」。あまりに流れが良いので、正直なところ、これで終わりかと思っていた。

だが、嬉しいことにもうひとアンコール。ニュー・アルバムからの「ゴー・スロウリー」で開けたあと、この日、「ザ・ベンズ」から3曲目となる「マイ・アイアン・ラング」。ファンというのはレディオヘッドに進化を求めがちではあるが、とは言え、やっぱりこのアルバムに思い入れが強い人が多いのもまた事実。後日、この日のセットリストがやけにうらやましがられるのも納得。トムの歌い方は、これらの曲に関しては随分ラフになったが、ここ最近のアルバムとのトーンに合わせられるようになったということか。そして最後は荘厳に「ハウ・トゥ・ディスアピアー・コンプリートリー」で重々しくクロージング…。

多様な音楽性に彩られた、この25曲をひとつのステージで同時に演奏することというのは、そうそう出来るものではない。いや、本人たちでさえ、以前のツアーであれば、一曲一曲の間に統一感はあまりなく、バリエーションをそのまま聴かせる感じだった。ところが今回のツアーともなると、そのヴァリエーションが、しっかりと“今のレディオヘッド”の中でしっかりと収斂出来るようになっている。ある意味、“レディオヘッド・サウンド”というものがある種の完成形を見た。そう、とらえてもいいかもしれない。まあ、そんなことはまずないとは思うが、仮に解散でもするなら、今のこのタイミングが一番良いかもしれない。まあ、そんな僕らの“成熟”やら“完成”と思っている域を、このバンドはまた軽々と平気に良い意味で壊して行くのだろうが、しかし、ひとつの到達点として、今のバランスは理想的だと思う。

(沢田太陽)

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