Duffy @ 10/3 恵比寿リキッドルーム

Posted on 10月 11, 2008 
Filed Under live review

もし、あなたがダフィの名を知らなくとも、「マーシー」はどこかで確実に耳にしたことがあるはずだ。

あの、ちょっと60sのレトロ感の強い、セクシーなしゃがれ声で歌われる、今一番ラジオで流れているあの曲。そう!その曲の主、ダフィ旋風が遂に日本でも吹き荒れた。本国イギリスやアメリカでのブレイクからは数ヶ月遅れてはしまったが、準備をかけて臨んだ分、日本での反響もやはり大きなものとなっているが、この日のリキッドルームにも、業界関係者とプレゼント当選者主体のコンヴェンション・ライブとは言え、開演前にはギッシリと人が集まっていた。

このような、一般売りしていない顔見せのライブの場合、通常5〜6曲もすれば終わりで、バックがカラオケなんてことも決して珍しくはないのだが、ステージには所狭しとフルバンド編成の楽器が並べられ、事前にもらったセットリストには13もの曲名が!アルバム収録曲より多いじゃないか!いきなり本腰入れた本格的なライブ。“声が聞ければ今日は良いかな”ぐらいに思っていた僕は、その想像以上の気合いの入れようにいきなりご満悦だった。

そして、白人3人、黒人3人のキチッとダンディにキメた男性バック陣を前に、白いドレスのダフィが登場しショウがスタート。まだスポットライトには慣れ切っていないのか、はじめての地での演奏に最初はこわごわとキョロキョロしている瞬間も見受けられ、歌い始めは正直硬かった。だが、いざ、サビの部分を力強く伸ばすと、そこで万感の拍手。これでどうやら彼女もリラックスしたようだ。

大体、3曲ごとにMCをはさむダフィ。トークは、まるでおじぎしないとしゃばれないようシャイな日本人のようでさえあったが、この控えめで飾らないところも、派手セレブ全盛の昨今では貴重。ここはなくさないで欲しい。

自慢の歌唱力については、キメの部分で“これでもか!”とこれみよがしに歌いあげるようなタイプではないため、“圧倒される”という感じではなかったが、良い意味肩の力を抜き、流しながらも確実に歌を届けるタイプのように見受けられた。たしかにレトロでソウルフルな感覚なのには間違いないが、同時に、このハイトーンでの鼻声は案外カントリーやらアメリカーナでも行けそうな声。こういう渋い路線でまだまだ彼女は開拓出来そうな、そんな気がした。それだけに、6曲目に演奏した「Rain On Your Parade」という新曲の「マーシー」を俗っぽいアレンジ(若干昨今のアメリカンR&Bの感じも)には多少違和感は感じた。

そのことは、続く「ワーウィック・アヴェニュー」や「ステッピング・ストーン」などを聴くとなおさら。やっぱりこの人、基本はどこか郷愁を誘うバラード・タイプの曲の方がいい。どことなくドリー・パートンを思わせる「ワーウィック〜」にダスティ・スプリングフィールドによるバート・バカラック作の名バラード「ルック・オブ・ラヴ」を彷彿させる「ステッピン〜」などをじっくり聴かされてしまうと思わずうなってしまうから。逆に言うと、この渋好みの声でよくもまあ、ここまでのブレイクが可能になったものだと驚くが。

そしてショウはアンコール前で「マーシー」の大盛り上がりでいったん幕を閉じ、2曲のアンコールで正式に終わった。60分を超える、心のこもった誠実なライヴだったように思う。いろんな意味で、「手垢にまみれてほしくない」。そんな純粋ないとおしさを換気するには充分なライブだったと思う。来年3月の初のジャパンツアーでもこのままであってほしい。(沢田太陽)

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