Dig Out Your Soul / Oasis

Posted on 10月 20, 2008 
Filed Under cd review

結果的に見て、オアシスの作品としては久方ぶりの世界的ヒットとなるこの最新作。CDの売り上げ自体が急落している最中とは言え、全英1位だけにとどまらず、実に11年振りとなる全米トップ10入り(5位)という事実は、ある時期よく言われていた「日本とイギリスじゃビッグ」なる風評を見事に吹き飛ばした。
今回のこのヒットで彼らはようやくレッチリ、グリーン・デイ、レディオヘッド、フー・ファイターズと肩を並べる“90‘sの大御所”の地位を確かなものにしたと思う。
「結果が出た後じゃなんとでも言える」。そうかも知れない。ただ、今作に関して言えば、その一端を聴いた時点から良い予感は強くあった。前作「ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース」から、今作に至るダークかつブルージーに枯れた路線は萌芽しはじめてはいた。だが、その時はノエルが曲作りの半数しか関わっていなかったことに半ば失望し「こんなのでオアシスって言えるのか?」と、デビュー当初の数々の黄金律との比較で悲しい気持ちも抱いてしまったもの。その路線は今回も変わらない。ノエルの曲数は今回も決して多くはない。
だが、今作が力強いのは、そうしたかつての“ノエルの天才的旋律“を聴き手に思い浮かばせることなく“今の俺らの歌”としての、自分たちの今現在の状況をしっかりと聴き手に説得力持って届けている点だ。“リアムとゲムとアンディとの4人のケミストリーが生み出すバンド“として、それを名手デイヴ・サーディが生々しくも硬質なアレンジメントが支えるバンドとしての方向性がしっかり固まったアルバムとなっているのだ。
ある時期、ファンに気兼ねをしてか、お得意のアンセミックなスタジアム・バラッドでお茶を濁しているような時期もあった。ロックバンドとして最も避けたい大型化の道を歩みそうになっていたことは否めなかった。だが、自らそれに気づいた彼らはその路線を封印し、自らの音楽の根源を削り取り、40代を間近に控え成熟した今だからこそ表現出来る滋味を素直にかつストイックに表現することを体得。特にノエル自身が自ら歌う3曲の楽曲に関しては、彼の心の師であるポール・ウェラーがソロ転向後に辿ったブルージーでソウルフルな求道精神に足を向けることで、これまでの彼の黄金律に新たなヴァリエーションを持たせることに成功した。発表楽曲こそ少ないものの、バンドの司令塔によるこの好調なヴァイヴが他の3人に伝播し、その結果、統一感のある楽曲群がそれぞれから生まれる結果となった。バンド内で互いが互いを刺激出来る状態が、エスタブリッシュされた後に“再生”のように訪れたのには正直驚いた。
しかもそれが、プライマル・スクリームの新作であまり効果的には働かなかった“近年の若手のサウンドの追従“という形でなしに、自分の型に深くこだわった末に生まれた点、ここも賞賛に値することだと思う。彼らぐらいになると「なんだかんだ言って『ホワイト・アルバム』でのビートルズの真似だろ」だとか、「あそこがドアーズで、ここがピーター・グリーン時代のフリートウッド・マックで…」ぐらいの指摘ぐらいは出てきそうではあるが、それでもただの物真似に終わらずに聴かせ切っている底力は見事である。
長いこと「ブリットポップ時代の象徴」として“旧世代の象徴”みたいな見方もしてきたが、さすがにここまで結果を出してくれば、そこは素直に評価したいもの。イギリスに行けば最新シングルはキングス・オブ・レオンの「セックス・オン・ファイア」に全く歯が立たず終わり、これまでなら「ほら、ざまあみろ!」ぐらいの勢いで喜べもしたかもしれない(いや、この世代交代観は素直に嬉しかったんだけど。このことに関しては、今度、キングスをレヴューしてまた言おうかな)が、中味を吟味しない図式化っていうのなんだしね。“ロックの担い手”の立場を若手に託して、一歩後ろに下がっての“大御所”としての立場からこれぐらいの作品を作ってくるのであれば、それはそれで歓迎したいものだ。

(沢田太陽)

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