American Teen
Posted on 9月 30, 2008
Filed Under entertainment
タイトルからして誰がどう見ても青春映画なこの作品。ただ、一言で青春映画と言っても、アメリカの場合、その傾向はどうやら2パターンに分かれるようです。
ひとつは明らかに「高校生から下」をターゲットにした、徹底的に子供っぽい味付けで作られたもの。最近で言うと「ハイスクール・ミュージカル」や「ハナ・モンタナ」が良い例でしょう。そしてもうひとつは、ティーンをメイン・ターゲットにしつつも、先述した幼さとは距離を置き、大人の感覚に近づきつつある人たちを対象にしたもの(だから大人でも楽しめる)。最近だと「ジュノ」や「The OC」「ゴシップ・ガール」あたりがそれでしょう。その違いは劇中で使われる音楽でも露骨に明白で、前者はポップ・エモやライトなR&Bが大半を占めるのに対し、後者ではインディ・ロックが目立ちます。そしてこの映画は、これ以上にないほどに後者的です。
では、内容に移りましょう。この作品ですが、ズバリ、ドキュメンタリー。ですので、当然登場人物にはスターはいません。この辺りの感覚は最近人気のMTVの「ザ・ヒルズ」にも似たリアリティ・ショウ的な今っぽさはあると言えばあるのですが、“実録トレンディ・ドラマ“な「ヒルズ」あたりとは違い、登場人物は何ら洗練もされていない、等身大かつ普通のアメリカはインディアナ州の高校生。誰かが仕込んだわけでもないから、彼らが体験する日常も内側で抱える悩みもダイレクトにリアルに伝わってきます。リアリティ
TVは本来こう作るべきだと思います。
そして、対象となっている生徒の多様性もまた興味深いものがあります。他人にいたずらして反省の色さえ見せないミーン・ガールなプロム・クイーン、学校内では知らない人がいないバスケ部のエース・プレイヤー。そんな勝ち組がいる一方では、ファンタジー系のプレステで非現実世界に浸り動物の剥製を集める奇妙なオタクの男のコが負け組であることを誇示しつつ女のコに懲りずにアタック。また、その一方では、どちらのグループにもハマらない、退屈な田舎ではその一歩先を行った感覚は受け入れてもらえないだろうと大都会行きを目指すインディ・ロックバンドを組む女のコもいる。このタイプ分けが、今のこのご時世にいがちなグループ分けを絶妙に体現してくれている様に妙に説得力があります。自分の周りにも「あ〜、いるいる!」と親近感を込めて見れるのが良いです。
ただ、それに加えてこの映画の良いところは、こういう典型的なタイプ分けがありつつも、そこに完全に鋳型にハマり切れない、ひとりひとりの個人の内面に潜むオリジナルな個性を見せる点です。勝ち組は勝ち組なりにトラウマや将来への不安が存在し、負け組には案外と楽天的な夢があり、そして一見マイペースそうな女のコは誰よりも傷つきやすい。こうした、ある種のわかりやすさの中にある不確定な何かが、見る者の感情移入を高めてくれるのがとてもよろしいです。
そんな今作ですが、今年の初頭に行われたインディ映画にとっての見本市とも言えるサンダンス映画祭で大絶賛。その勢いをもってこの夏、アメリカで公開。単館中心のため興行こそ大きなものではなかったものの「2008年話題の一本」としての地位を確固たるものとしています。
そして、気になる音楽面ですが、これが本誌読者の方には間違いなくたまらない!冒頭に流れる音楽がいきなり今号の表紙のブラック・キッズの「ボーイフレンド」。そして、エンドロールで流れるのは前々号の裏表紙を飾ったMGMTの「キッズ」、それに続いてティンティンズの「グレイトDJ」。これ、イギリスじゃなく、アメリカの映画でですよ!この辺りに、今、このあたりの音楽がアメリカでどんな立場のものなのかが伺えて非常に興味深いです。また、この映画のアメリカ版のポスターは1985年の名作青春映画「ブレックフ
ァスト・クラブ」のパロディ。この映画もシンプル・マインズの主題歌が全米1位となるほど、ニュー・ウェイヴ色の強い音楽面が話題となりましたが、「ちょっとマセたアメリカン・ティーンとインディ・ロック」という関係性はどうやら普遍的に有効なようです。
文:沢田太陽(10/11より新宿バルト9ほかで全国ロードショー)
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